
Tomy jr.
音楽の原点を探るライブコンサート
前回(スタンダードな日常から⑮)は、人間の声だけの
「鼻歌」が音楽の原点だと書きました。また、音楽を構成する音には「人間の声」と「楽器の音」の2種類しかなく、その組み合わせは
3種類しかないのに世の中の音楽はそのうちの「楽器のみ」「人間の声&楽器の音」の2種類で、原点である「人間の声のみ」は殆ど耳にしないのは不自然だと書きました。
ならば、
音楽の原点であり本来スタンダードな「人間の声」だけでライブコンサートをやってみようと思い至りました。ただしコンサートにするためには休憩を挟んだとしても2時間を2部構成にしても15~20曲は必要です。この曲数を男声1人(Saigottimo)ではさすがに厳しいのでSaigottimoとのDuet経験もある女声(Macky)も巻き込むことにしました。

楽器の伴奏を伴わない歌唱をアカペラ
*と言いますが、ヴォーカリストに「アカペラで」と言うと“無伴奏で楽器の伴奏があるときと寸分狂わぬ音程とテンポで歌う”という高いハードルを想定されてしまいます。そのせいもあってか、
この企画をMackyに話した際「最低限の楽器だけ入れてはダメですか?」と、なかなか理解してもらえませんでした。
でも「いやアカペラに拘っているのは、人間の声だけの方が常に良いと思っている訳じゃないよ。むしろコンサートが終わった時にお客さんが『楽器の音が聴きたい』と思ってくれれば成功だと考えているんだよ」と言ったら彼女もようやく分かってくれて「
なるほど!そういうことですか。つまり最初にイヤなものを聴かせるんですね!」
「う~ん。確かに楽器が入った方が音楽的には良くなるはずだから、まあ、そうかもね」ということで、彼女の理解も得られました(?)。
奇しくも2人ともステージデビューから四半世紀経っていたので「デビュー25周年記念ライブ」と銘打ち、第1部は男声と女声のソロを中心に、第2部はDuetを中心に構成しようという構想までは固まりました。
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あとは会場探しです。本来であれば2人が定期的にライブをブッキングしている渋谷のjazz喫茶「SEABIRD」で開催するのが筋ですが、
こんな実験的かつ私的なライブを一般のお客様も来る街のお店で開催するのは気が引けますし、ピアノやベースが常設してあるjazzのお店で楽器を使わないアカペラだけのライブをするのは不自然でもあります。
貸し切りにするとしてもそれほど集客は出来ないので広さは求めませんが、音響の専門家によれば
アカペラ(無伴奏)の場合はお風呂場のような残響が適度に必要とのこと。候補としては以前に朗読のライブコンサートで何度か聴きに行ったことのある、代々木上原の「ムジカーザ」を考えましたが、半年先でも希望する日時に予約出来ない状況でした。

ところが理想的な会場が見つかりました。
「赤坂ストリングスホール雪華」という小ホールを一般公開前に貸していただけることになったのです。場所は地下鉄赤坂駅から徒歩5分でTBS本社のすぐ裏という好立地!オーナーは古くからの知己で現役の会社役員にしてプロ裸足のヴァイオリニスト。複数のフルオケや弦楽四重奏団で活躍している人です。
彼が
弦楽四重奏団の練習をするためにご実家を立て直して作った半地下の小ホールなので、ここの反響が実に素晴らしいのです。クラシックの世界は基本的にアコースティック
**かつノンPA
***で、声楽でも半響板だけで声を会場の奥まで届かせます。客席スペースがキャパ20人(詰め込めばもっと入るとは思いますが)という点でも、まさに理想的な会場です。
このホールはオーナーの知合いで音楽仲間でもある建築家が設計したそうですが、自身でもヴァイオリンを演奏するので「響き」を重視した音響設計をしたそうです。このホールの設計思想や音響特性については下記のPVおよびSaigottimoのブログをご覧下さい。
・
赤坂音楽堂/㈱小さな音の設計室 (
https://www.youtube.com/watch?v=k8lPFg__hFY )
・
25周年記念Liveは赤坂で11月 | Saigottimoのブログ
(
https://ameblo.jp/saigottimo/entry-12906967294.html )
今回、
アカペラ(無伴奏)かつノンPA(生音)で歌うのは両者とも初めてでしたが、そもそもこんなライブコンサートはジャンルを問わず古今東西初の試みでしょう。特にラルフ・フラナガン楽団の演奏で知られる「唄う風」などは歌詞すら無いため本当に鼻歌のようにハミングしていただけですが、これもやはりこのホールの音響あっての事でしょう。(2026.1.2)
*:アカペラ(acappella)は音楽用語で
楽器の伴奏の無い歌唱を指します。イタリア語では「礼拝堂」を意味する単語なので「礼拝堂風に(無伴奏で歌え)」ということでしょう。
**:アコースティック(acoustic)は本来は「音響」の意ですが、一般的には電気を使う電子楽器などを使わず、
楽器本来の響きを生かす演奏スタイルを指します。
***:ノンPAとは、
PA(Public Adres)と呼ばれる音響機器類(マイク、アンプ、スピーカー等)を使用しないことを指します。
****:当日の演奏曲目は下記の通り。
1st.set (①②③⑦⑧:男声ソロ、④⑤⑥⑨⑩:女声ソロ)
①上を向いて歩こう/②私はイエスが分からない/③この素晴らしき世界/④ファースト・ラブ/⑤マスカレード/⑥リメンバー・マイ・ラブ/⑦千の風になって/⑧唄う風/⑨蘇州夜曲/⑩ヒーロー(マライア・キャリーの曲)
2nd.set (⑪~⑮⑱:Duet、⑯:女声ソロ、⑰:男声ソロ)
⑪ラブ・ミー・テンダー/⑫星に願いを/⑬この世の果てまで/⑭グッド・ライフ/⑮ほほ寄せて/⑯ローズ/⑰スマイル/⑱聖夜(encore)
※うさおの追補
演奏前風景
この日の室内の人数は演奏者も含めて12人でした。知っているスタンダード曲が多く聞き馴染みがあり、飽きませんでした。
自宅をリフォームされた時に、半地下にして楽器演奏の練習が可能な部屋を作られたと聞いています。オーナーは弦楽器を演奏される方だそうで、弦主体の響きが得られる練習室を設計されたようです。
うさおの「目の子」の採寸で幅8m×奥行12m×高さ5.5m位と値踏みました。実際は6.5m×9.5m×4mだったので、うさおの目測は大きく誤っていたことになります。
ちなみに部屋の最適残響時間は部屋の容積に比例しますので、うさお:528m
3と実際: 247m
3とでは倍ほども違います。残響理論を確立したKnudsen博士のコンサートを用途とした場合、最適残響時間が1.6秒と1.75秒と違ってきます。だめじゃん、うさお。
Tomy Jr.さんの声が朗々と鳴っていたので、好い空間を得られたなという感じです。
砂岩の背後壁は意匠的にも木壁のように見えて素晴らしかったです。矩形の部屋ですのでフラッターエコーなどの影響があるかと思いましたがそれは感じられません。
ステージから客席への床張りが客に向かって縦張りだったので、昔付き合っていた音響関係者の噂話を想い出しました。特に弦楽器の場合、横張りだと板のエッジで音が反射されて音が詰まるという感じがするそうです。縦張りだとその反射エッジが無いのでナチュラルに聞こえるそうです。これは検証したデータでは無いのであくまで噂話です。※関西大学の櫻井先生はこれを境界波と呼んでいました)
偉そうに述べましたが老齢で耳の性能が下は80Hz 、上は8,000Hzしか聞こえませんので、朦朧とした感想です。(この前音響仲間と話をしていましたら、皆さん、4,000Hzも聞こえてないと医者に言われたそうです。ありゃりゃりゃ)
見た目の仕上げ:
演奏サイド背面壁 砂岩(石の表面はざらついている)
帯状の材を積み上げ1mm程度の部材間のスリットが存在している。
壁 上部 漆喰塗 表面はざらついている
下部 硅カル板ないし合板 練り付け(突板)仕上げ
床 フローリング 目地方向がステージに対して縦方向張り