太平洋の奇跡
        ~フォックスと呼ばれた男~

                       Tomy jr.

日本映画 企画制作/日本テレビ放送網、配給/東宝、2011年公開
監督:平山秀幸
出演:竹ノ内豊、井上真央、
   唐沢寿明、山田孝之、
   中島朋子、阿部サダヲ、
   ショーン・マクゴーウァン、
   ベンガル 他
上映時間:128分
興行収入:16億円
写真:映画.comより
《概要》
太平洋戦争末期、米軍に占領されたサイパン島において住民(邦人)も保護しながら47名の兵士を率いてゲリラ戦を展開し、その賢さゆえ米軍からフォックスと呼ばれ畏れられた大場栄陸軍大尉の512日に及ぶ戦いを描いている。
《ストーリー》
日本の絶対国防圏内のサイパン島は米軍の圧倒的な力の下に軍事拠点として壊滅、指揮官4人は全員自刃する。しかし大場隊は島に残された邦人達を伴いタッポーチョ山に籠ってゲリラ戦を展開し戦後投降するまで米軍を悩ませた。
《所感》
先日観た映画「雪風」と同じく竹ノ内豊主演の戦争映画があると知人から聞いて観たもの。本作は史実に基づいているが、全編を通じて流れているのはヒューマニズムというかGHQが日本に根付かせた“戦後民主主義”に他ならない。従って劇中の日本軍が信奉する天皇の存在や玉砕思想、捕囚の辱めを受けぬ自決、等は全てアナクロニズムとして描かれる。また米軍は既に島を占拠し軍事利用しており、もはや戦い自体に軍事戦略的な意味はなく、米側は残兵の投降と民間人を含めた収容が目的となっていた。本作がこうした視点で描かれているのは原作(「タッポーチョ『敵ながら天晴』大場隊の勇戦512日」)が米国人によることを考えれば当然であり、また映画で描かれるエピソードが散文的なのは脚本家が複数居ることの影響かも知れない。竹ノ内豊がとにかくカッコイイことに尽きてしまうのは、映画のエンタメ性からも納得せざるを得ない。(2025.11.14)