文書係の事件録
うさお
「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」はフランスのテレビ・ドラマです。「犯罪資料局で働く自閉症のアストリッドは、警視・ラファエルに才能を見いだされ、事件を一緒に調べようと提案される。」というドラマの粗筋です。解決していく毎に二人の間には友情が芽生え、自閉症のアストリッドも心を開いていきます。
このドラマはNHKでも取り上げたことがあり、CSのミステリィ―チャンネルでも放映されました。U-NEXT、Hulu、Youtubeなどでも見れますよ。
ドラマ中でも、「自閉症」は病気ではなく、その人のアイデンティティだと繰り返し、語られています。フランスのお国柄が影響していると思います。

アストリッドは人に干渉されるのが嫌いで、手や肩などを触れられると、パニックを起こしてします。また、聴覚の異常過敏でもあり大きな音がすると恐怖感を持ってしまいます。そのため、静かな犯罪資料局や自宅から出るときには、イヤーマフをいつも耳に掛けています。そのような繊細なアストリッドに比して、がさつで猪突猛進型のラファエルとは、相互に徐々に相手を思いやることを学んで行きます。

左ラファエル 右アストリッド
アストリッド役のサラ・モーテンセンはノルウェー語、フランス語、英語を話すトリリンガルな人です。コメディを志した舞台女優さんだけあって、随所に自閉症者と一般人とのギャップをコミカルに演じています。金髪ですが碧眼でないので、ドラマ中のブロンドというワードに少し違和感を憶えました。なるほどブロンドさんですね。
中学生時代の同じ髪型の少女が出てくるのですが、これがまあ、すごく似ています。こんな役者さんをよく見つけてきましたね。
サラ・モーテンセン自身の自閉症患者との交流経験を活かしての演技はなかなかのものです。「アッ!」とか「カッ!」と聞こえるアストリッドなりの、周囲の人間の動作を否定する演技はなかなか笑えます。
ラファエル役のローラ・ドヴェールはよくミステリーのテレビドラマに出ており、他にも刑事役のドラマがあります。アストリッドと比較すると肉感的で、恋多き女刑事を演じています。いかにもフランス人が好みそうな俳優さんです。
日本で言うなら名取裕子さんあたりでしょうか。
過去に自動車事故で心肺停止、椎骨や顎骨を折り、歯も全て無くなりました。その時に最愛の恋人も失い、数回の手術と臓器移植で7年も費やし、運転も出来なくなります。ドラマの運転シーンは別の人が運転しているか、運転免許のいらない地下駐車場で撮影されています。笑えるのは車の外の景色が動いているときは、スタッフが車の前と後ろで引っ張たり押したりしているのだそうです。
左アストリッド 右ラファエル
2年くらい前にシーズン1を見て面白いと思っていましたが、昨年U-NEXTを検索するとシーズン4まで配信されています。一気に見ちゃいましたね。韓国ドラマの様に癖になります。
シーズン5はCSのミステリィ―・チャンネルでお正月に放映されましたので、これも録画して見てしまいました。
犯罪資料局にアストリッドだけが使える部屋があり、そこで資料を床に撒いて全体を俯瞰してみることで犯人を探り当てます。ここに入れるのはアストリッドが心を許した人だけです。父の友人である犯罪資料局局長が特別にアストリッドに与えた特権です。
雑貨商?コンビニ? テツオ・タナカとタナカさん
日本人にとって面白いのは、アストリッドが毎週お買い物の日を月曜日と定め、日本人の田中さんが経営する雑貨屋に買い物に来るところで、日本人的な礼儀正しさと静かなことがアストリッドにとって望ましい環境です。田中さんは日本の礼儀を教えます。
習慣を破られることを嫌う彼女ですが、やむなく水曜日にお店に行く時があり、田中さんの甥のテツオが店番をしています。そっけない彼女の態度に驚くテツオですが、お互いの領分を犯さないことで、いつしか二人はお店の外でも会うことになります。日本人は物静かだとフランス人に思われているんですね。
ウィリアム
アストリッドは自閉症の人たちが集まる「社会力向上クラブ」に入っています。その会のリーダーがウィリアムです。自身も自閉症なのですが比較的軽度なのか、一般の人の心情もよく理解しています。いつもアストリッドのことを心配しており、幾つもの助言や手助けをしています。
サバン症候群の人なのでしょう。お兄さんは医学博士で二人とも、チェスの名手です。恋人もいるのですが一度もあったことのないnetの人で、五体不満足の女性です。
彼が社会生活にストレスを増すアストリッドに、10個の豆を与えます。ストレスを受けると豆が一個減ります。静かな環境に戻ると豆は一個戻ります。豆が無くならないようにバランスをとりなさいと。
「僕には役に立つ方法だよ」 含蓄のある名言です。
兎も角面白いですよ、理屈抜きで・・・。
