似非音響学

 音に関する都市伝説的な話をしますね。少しだけ本当の話もあります。うさおはなにせ素人に毛の生えたようなものなので、週刊誌ネタと思い信頼性はご容赦くださいね。信じるか信じないかは、あなた次第です。

 音と言うのは、媒体(一般的には空気ですが、水中とか、固体の中もあります)を振動波(粗密波)が伝わり、耳に入り鼓膜を揺すり、その振動を砧骨、槌骨、鐙骨を介して三半規管の蝸牛(コルチ管)に伝え、電気信号(ニューロンね)で脳に伝達されます。

 結構、複雑な伝搬の仕組みをしていますね。 
 ですので、人間が空気振動を音として感じるのは、脳に到達してからです。脳内でこの振動の情報分析をし、有意味な音と無意味な音に選別します。


空気振動が音となって脳にまで伝わる

 脳内に蓄積された音波の情報データベースから、言語情報をもつものや、物体や動物などから発せられた音情報と判ると、その次に情報を推理します。
 「ばかっ!」って言われたら、💢ってくるし、「ブーブー」って聞こえたら自動車が近づいてきた、危ない!とかを理解します。 


あっ,車が来た!

 うさおのように、脳内データベースが古いと、よく聞き取り間違いをします。
 伊達「責任者を出せ」
 富沢「店長、お客さんが先に医者出せって言ってますが」
 これはサンドイッチマンの「宅配ピザ」のネタでしたね。
 
 もう少し詳しく音の聞こえ方について考えてみましょう。

 もともと、人間の聴覚器官は魚類の体側にある側線器が進化したものだと言われています。人間は胎内で成長していく過程で、魚類、爬虫類、両生類、哺乳類、霊長類に進化の過程を辿るのでしたね。
 さて、魚は頭の骨の中に内耳みたいなものがあります。それと体の側線器で音や振動、体の向き、水の流速、水圧の検知しています。
 こんなやつですね。
 

魚の側線器

側線器の形態 出典は忘れました

 この絵のように、側線器には鞭毛が生えており、中にある耳石が動くことで振動を検知するそうです。なるほど。
 水中で高速で泳ぐ魚たちが激突しないのは、ひとえにこの側線器が水圧を検知して、回避行動をとるおかげだそうです。
 
 耳介によって顔が向いている方向の音を集音して外耳道に導きます。
 このときの耳介の大きさと、鼓膜の大きさから認識できる音の周波数が決定されます。一般的に人間が聞こえる音の範囲は、20Hzから20000Hzまでの領域だとされています。歳を取ると高い周波数から、どんどん聞こえなくなります。
 いま、言葉の綾に気が付きました? 人間には聞こえない音もあるのですね。
 0Hz~20Hzの低周波音と、20000Hz以上の超音波音がそうです。あっ、「Hz」と言うのは、周波数の単位です。ドイツ語の心臓を表す「ヘルツ」(どきどき感)から来ていると、うさおは間違って覚えていました。ドイツの物理学者ハインリッヒ・ヘルツから採ったんだって。いい恥かいちゃった。 
 
●カクテルパーティー効果
 これは有名な現象で、人間が音響情報を脳内で再解析している証です。色々な周波数、大きさ、継続時間などの情報から、特定の人(好きな人)の言葉(信号)だけを抽出する技のことですね。 弁別能に優れた人は、人ごみの中でも返事が速いよ。
 残念ながら、うさおは左耳に耳鳴り現象が発生しているので、うまく音を選別できません。だから、これ、苦手です。


カクテルパーティ効果

●断続音の怪
 昔、昔、鉱石ラジオで短波放送を聞いていました。競馬じゃないですよ。
 「きょ・のに・じまのて・・は、いち・・じゅう・・でしょう」
てな放送で、聞き取り難いたらありゃしない。
 最近の研究では、この「・・・」の部分にホワイトノイズの「ザー」を入れて聞かせると、これも錯聴の一種ですが、意味のある言葉として理解されるようです。
 「きょのにじまのてんきは、いちにちじゅうあめでしょう」
 (※赤字を脳が経験則から補っている。)
 頭の中のデータベースの中で、一番可能性のあるフレーズに置き換えて理解するので、意味のある言葉として再構成します。カクテルパーティ効果もこの原理かも知れません。
 判りにくい絵の例を示します。無意味な幾何学模様ですが、無意味なノイズを入れると有意味な文節になります。


幾何学模様か?

星(ホワイトノイズ)を入れて見る

何だか魚のようだ!(結構強引な関連付けの絵だ)

 断続音の違う例ですと、「強い音と弱い音を交互に聞かせると、弱い音は連続した音に聞こえる」と言うのがありました。プレグナンツの法則を地で行ったってやつで、人間は考えるのが面倒で脳の負担を減らしたいので、一纏めにして考えちゃえってやつですよね。この場合、弱い音は聞き取りにくいから、連続音と考えちゃえってことですか。うさおはこれ得意です。面倒なこと考えられないし。


弱い音は連続音として聞こえる

 また、「右耳と左耳に高い音と低い音の断続音を、時間をずらして聞かせると、片方の耳には高い音が、もう一方の耳には、低い音が分離して聞こえる」と言うのがあります。面白いなあ。人間って基本的にずるをしたい本能があるので、え~い,この音は右、こっちは左でいいや、てな風に思うんでしょうね。でもそのずる賢さが、人類が発展してきた原動力だともいわれていますね。
 以上、「音の科学」難波精一郎他の本に詳しいですよ。




どちらかの耳に片寄る

●頭部伝達関数(HRTF)
 人間は音が来る方向を基本的には左右の耳で検知しています。でも、それだけでは後ろから来た音とか、上からくる音の方向は、判らないのですね。そこで人の頭の周りに沿って、巡ってくる音の変化を捉えることで、微妙な音の方向を得ています。その巡ってくる音の伝わり方を伝達関数と呼びます。この伝達関数を原音に畳み込み演算してやると、Aさんが聞いたであろう音を再現することが出来ます。
 これをうまく使うと、2個のスピーカーだけで、頭の周りを飛ぶ蜂の音を、再現することもできます。どうも、不出来な解説でしたね。余計判りにくいね。
※畳み込み演算;FFT演算装置で二つ以上の信号の掛け算をする。
※FFT;高速フーリエ変換のこと。
※コヒーレント;干渉のし易さ。


バイノラル再生

 バイノーラル再生は、基本的にはヘッドフォンが適していますが、スピーカーでも出来なくはありません。スピーカーの左右のクロストークを、キャンセルすれば同じ効果が得られます。この方が自然感をより得られますね。欠点がひとつ、頭の位置を動かすと、位相がずれて、変てこな空間の音になることです。

●補強音
 人間の耳は良くしたもので、50ms内の時間遅れを伴った音は、前の音を補強すると言われています。(ハース効果)50ms以上の時間の遅れが出てしまうと、これは二つの音として弁別してしまいます。音が濁ったり、エコーになったりするんですね。
 また、その短い時間の中では、右の音が先に聞こえ、後から左の音が聞こえてくると、右の音の補強音として聞こえ、左の音とは認識しないと言われています。へえ。

●マガーク音
 マガーク効果と言うのがあります。これも錯聴の典型的な例です。ある音に違う音を発している口の動きの映像を見せると、両音とも違う音で認識してしまう現象です。
 マガークさんの実験では、「ガ」と言う口の映像に、「バ」と言う音声を流すと、なんと「ダ」と聞こえてしまうと言うのです。音は脳で判断して有意味音にしているので、口の形からくる予断が入ってしまうと、違うデータベースを引き出しちゃうんですね。


口の形に惑わされる

●超音波音と低周波音
 犬などは15Hzから5,0000Hzまで聞くことが出来ます。こうもりは1,000Hzから120,000Hzだそうです。こうもりは自分で超音波を発しながら反射音を捉え、レーダーのように位置情報を掴みながら飛行しています。波長が短いため識別出来る分解能も高く、0.3mm以下のワイヤーも軽々回避出来ちゃうんだそうです。

 低周波音は、耳には聞こえませんが、頭痛がする、めまいがする、圧迫感があって寝られないなどの症候が見られることがあります。深刻ですね。火山や潮鳴りなどの自然現象もありますが、最近ではボイラー、エコキュート、ベルトコンベア、風力発電など思いもかけない所からも発生します。過敏な人は不定愁訴の症状が出たりします。肩こり、足がだるい、血圧上昇、脱力感などが現れます。うさおの現在の体調とぴったりマッチします。やばい!
 低い周波数の音は、壁も透過してしまうし遮蔽効果もほとんどありません。その場所から逃げるしかないんですけど、経済的にそんなことが出来る人は僅かですね。

●緊急地震速報
 この警報音はNHKが東大の名誉教授に委託して作ったとか、うわさを聞いたことがあります。。
 使われている曲想は「ゴジラのテーマ曲」で、高音域のみを使っているんだそうです。その教授は映画ゴジラの作曲家の甥だっていうけど本当かなあ。


ゴジラが稲村ヶ崎に上陸してきたぞ

マスキング
 タイムマシン効果;ある音が別の強い音で隠されてしまう、マスキング現象はよく知られています。マスキングにはタイムマシン効果と云うのがあります。先に発生した音を後から鳴った音が、時間的に遡ってマスキングすることがあります。5msくらいの時間内だったな。これをタイムマシン効果と呼びます。やはり、音は脳内で再構成されて検知するので、脳内の解析処理や分析時間の速さで起っちゃうんですかね。


マスキングの概念図「音の科学」難波精一郎他

マスキングの利用;CDなどのデータ圧縮方式に、MPEG方式というのがあります。データ容量に制限があるので、例えば、楽曲がそれ以外の楽曲でマスキングされた情報は、人には聞こえないのでその隠れた情報をばっさり削っちゃえば、少ない情報で違和感なく再生できます。


●4,000Hzの音
 4,000Hz は人間の耳の感度が最も良い周波数です。等ラウドネス曲線を見ても、小さな音圧レベルでも他の周波数より、聞き取れることが判ります。その代わり、耳が悪くなる時もこの周波数あたりからです。
 痛し痒しだなあ。人間は20Hzから20,000Hzまで聞こえると言いましたが、そんな感度の良い耳を持っているのは小さい子供の内だけです。うさおのように老齢になると、16,000Hzはおろか、8,000Hzも怪しいもんです。
 だから「聞き損じ」や「聞き間違い」が多いのね、うさおは。


等ラウドネス曲線 集合住宅の騒音防止設計入門より

 若い人がたむろすることの多いコンビニの店長は、若者の騒ぎを迷惑だと感じ近所の手前もあり、17,600Hz近辺の騒音「若者たむろ禁止音」を放送して追い払っています。(モスキート音)中年以上の客は耳が劣化して、この軋り音が聞こえません。若者はガラスを引っ掻くような音に聞こえ、頭に響くので辟易して退散するのだそうです。

●CDよりLPレコードの心地よさ

 CDは人間の可聴域の音の記録が可能です。ダイナミック・レンジが大きいので、大きい音から小さい音まで再生できるのと、S/N比が高く取れるので、ノイズが少ないメリットがあります。
 LPレコードは、円盤に彫られた溝を針がなぞって、その針の振動を電気的に拡声します。 従って物理的な溝の幅、深さによって音の大小、音色が決まります。溝にごみが入ったり、盤に傷が付くと、スクラッチノイズが発生します。
 でも、盤があまり磨り減っていなければ、20,000Hzを超す音域も再生できます。この聞こえない高音が存在すると、安らぎ感や、きらびやか感が得られ、聴き心地の良い空間が得られるようです。

無限音階
 無限音階というのがあります。音階が次々に上がって行きますが、音が高くなりすぎて、可聴域を超えることは無く、ずっと聞こえています。エッシャーの絵のように階段を上り詰めると元の階に戻っているようなそんな感じです。これも、錯聴のひとつです。


エッシャーの無限階段

 無限音階は絵のように、基音、倍音、倍音の組み合わせの音で成り立っています。音の高さは基音で決まりますが、2番目の倍音が強い。この組み合わせでA、B音をスイープ(周波数掃引)させると、A音よりB音のほうが基音が高いのですが、Aの倍音の方が高くて、強い音なので、B音に続けてA音を聞くと、この音のほうが高く聞こえてしまいます。これを繰り返すことで錯聴させるのです。
 ゲーム音楽にも無限音階は、大変便利な効果なので良く使われていました。
「図解雑学音のしくみ  中村健太郎」より


Aの音階

Bの音階

●ラインアレイスピーカー(トーンゾイレ)
 トーンゾイレとは、無指向性のスピーカを縦に積み重ねたものです。理論的には点音源の線状配置なので、疑似線音源になります。面白いことに、水平方向の指向性を持ちます。
 線音源ですから、点音源より距離減衰が小さいです。点音源は倍距離6dBで減衰しますが、線音源は倍距離3dBです。それに音源が並んだことにより、スピーカー近傍は面音源となり、ほとんど減衰しません。(ざっくりの話なので、誤解を招きそうですが、実際はその見かけの面積よって、面音源、線音源、点音源に変化し,減衰曲線は変わります)


トーンゾイレ・スピーカー 

●伝声管
 伝声管というのをご存知ですか、よく砲台跡を見に行くと砲台間に貫通している穴が存在します。これがそうです。船の操舵室と機関室を繋ぐ真鍮の管がそうですね。
 図にありますように、管の中を音声が多重反射して、一種の平面波が出来上がり、ほとんど減衰せずに伝わります。点音源のように、球体状に放射していくと、同一面積に入ってくる音のエネルギは、面積比で減少しますのでこれが距離減衰と言われているものです。


千代ケ崎砲台 退避処に 2017年1月21日

千代ケ崎砲台 伝声管があります 2017年1月21日
 
伝声管の原理 点音源の原理

共感覚
 音響技術者を目指す女子学生さんに音響のことを教えていた時のこと、常日頃から独特の雰囲気を持つ彼女に神秘性を感じていたうさおは、彼女から「先生、教えていただきたいことが・・・」と質問されたときにはくらっと来ましたね。
 若い女性の醸し出す独特の魅力にくらくらしながら、それでも師匠らしく「なにが~?」と。
 「何かな?」も無いものであるが、まあ、ここではさておき、聞いて見るとこんな話でした。
 「自分の祖母は三味線の師匠をしていた。その所為か祖母は良く歌舞伎に連れて行ってくれた。物心付いた時から、三味線の音を聞くと赤い色が見える。先生、これっておかしいことですか?」
 彼女のその精神構造に心惹かれるものがあり、さて如何答えるべきかを考えてしまいました。これは共感覚を呼ぶ一種の錯視なのだが、精神に異常をきたしている訳ではないらしい、が、正常でもないでもないらしい。普通に生活していく分には何ら影響が無いと言う話だし。う~ん、うさおが気になったのは、赤の色が見えると言うことなのです。


三味線と撥

 ここで、共感覚と言うものを少し説明しておきましょう。
 「共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人」リチャード・E. シトーウィック著の本に詳しいのですが、2千人に一人の割合で特殊な感覚を持った人がいます。この感覚は生活には何の支障もなく暮らすことが出来ます。この人たちは、例えば食物を味わうと指に触感が生じるとか、音を聴くと色が見えてしまうと言うことが生じます。この音は赤い。共感覚者の場合、これは 比喩ではなく、実際にそう感じています。
 五感のうち、どの感覚とどの感覚が結びついて感じるかは人によって異なるそうです。そのなかでも視覚と聴覚の結びつきが最も多いらしい。著者はこの現象は脳内の配線が混乱して生じる異常な現象と考えていたそうですが、研究を進めるに従って共感覚は人間(哺乳類)の誰でも持っている根本的な感覚で脳の正常な機能ですが、その働きが意識に現れる人はほんの一握りでほとんどの人は現れないまま生涯を終えるのだとか。


脳の働き

 共感覚は、脳の皮質の下にある海馬を中心に、いつでも起る神経プロセスだが辺縁系の正常な処理を通過すると一般的な人は意識から失われてしまう。ヒトの進化の過程でそういう仕組みになったのだが、どうも「認知の化石」とも言える原始的意識らしい。
共感覚の中でも、音楽や音を聞いて色を感じる知覚は「色聴」といわれます。絶対音感を持つ人の中には、色聴の人がいる割合が高いそうである。また、同じ共感覚者同士でも同じ音を聞いても同じ色が見えるかと言うと、そうでもないらしい。


 で、先ほどの話ですが、彼女は三味線の色を赤と答えました。更に言うなら歌舞伎の舞台全体も赤に染まっていくのだとか。これは共感覚を持っていることとは別の、彼女の原体験に由来する精神的トラウマにではないのか。
 何故赤なのか、弦の音は何故赤なのか、赤と言う響きに「血」を連想してしまうのは、うさおだけの性なのか。う~、何だか心理サスペンスのようだね。


上村一夫、小池一夫作「修羅雪姫」

尖ってて、好き!梶芽衣子さん

 彼女が幼い時に祖母を訪れる男性が居た。もちろん、祖母の連れ合いではない。不倫の関係だ。 やがてこのことが本妻に知られることに。乗り込んでくる本妻、もみ合ううちに三味線の撥が、本妻の喉に。辺りは血の海。佇む彼女。放心した祖母は無心に血だまりの中で三味線を弾きだす。
 てな話を考えていると、件の女子学生は不気味なものを見たような顔をして、「失礼します!」と帰ってしまった。
 説明に用いたこれらの図は、本文の内容とはまったく関係がありません。単なるイメージです。
 梶芽衣子さんは「修羅雪姫」を演じているときには、とても尖がっていて素敵でした。余談ですがこの映画の監督は藤田敏八です。

●舞台床の秘密
 ステージの床は木の板がどう張られているかご存じですか?床板は客席に対して平行に張られるべきなのか、それとも直角に張られるべきか。演劇を行う舞台では、役者が奥行き方向に動くよりは、舞台の袖から袖へ長手方向に動くので、抵抗がないよう平行に張られる方がよいと。
 反面、楽器の演奏者からは床板の張り目地があると、何か圧迫感のある反射音が返ってくるので、直角方向に張られている方が、音が客席に拡散されると言うものです。永田音響設計の会誌のコラムにありました。まあ、都市伝説ですので。
 確かに関西大学の桜井先生のご研究では、障壁のエッジにはホイヘンスの境界波が立ち、そこから回折波が発生する事を述べられておりました。何らかの影響はありそうです。


舞台床の板張り(縦方向の例)

アコースティック・エミッション
 岩やコンクリートのような固体に圧力を掛けると、なんとその内部のミクロ的な破壊場所から、弾性波によるエネルギー放射があり、特殊な超音波が発生します。勿論この時に表面には何の破壊も生じていません。内部の極々微細な破壊現象です。
 この現象を構造物の健全度検査に用います。コンクリート構造物の表面に多点の圧電素子センサーを取り付けて立体的に観測すると、構造物の損傷や破壊現象を察知することができます。破壊に至るまでのモニタリングが出来るということです。
 面白いことにこの超音波は、一度掛けた圧力以上のものが掛からないと、超音波を発生しません。これをカイザー効果と言いますが、構造物に掛かったであろう圧力を記憶しているんですね。


アコースティック・エミッション

●風鈴
 風鈴が鳴ると本当に体温が下がるって知ってました。人が脳で音を検知すると涼しく感じるんですって。条件反射ってやつですね。
 でもこれは、風鈴の役割を知っている日本人だけが感じることで、風鈴を知らない外国の人は何も感じません。
 こんな実験例もあります。室温27度の部屋に人を入れ風鈴の音を鳴らすと、10分くらいの間に気温が21度~23度に下がったという回答が多く見られました。
 そこで、サーモグラフィを使って、体表面温度を計測すると、風鈴の音が聞こ始めた途端に体温が下がったそうです。勿論、室温は27度のままです。
 凄いですね。この報告者の人はこんな考察をしています。
 「人の脳は、思い込みによる錯覚に弱い。風鈴は風があるときに鳴るものと知っている日本人の脳は、「風が吹いている」=「涼しくなった」と錯覚し、本当に涼しくなったときと同じように体温まで下げてしまう。」
 脳が持っているデータベースを呼び出し、錯覚させ体に変化をもたらさせてしまう。キリスト教の信者で信仰心の篤い人は、キリストがゴルゴダの丘で鞭打たれたのと同様の傷が背中に生じる例や、修験者が一心に念じると熱した火渡りが出来たり、日本刀の上を素足で歩けたりするのと同じかな。少し違うかな。



 基本、音は脳に至ってから認識するので、脳の働き如何で、とんでもない錯聴を聞かすことがあります。脳内にデータベースが出来るのですから、音の情報は記録できます。
 振動はどうでしょう。あまり記憶に残らないと言われています。記憶しているようでもそれに付随する音の情報が鮮烈で、音を記憶しているようです。


戻る