戸袋のデザイン  2016年7月15日


 日本には、雨戸を収める戸袋があり、今の建売住宅にも戸袋の形は変わったけれど、附いています。
 江戸時代には、この戸袋を銅版で製作したり、漆喰壁で風雨を防ぐ工夫と、粋に見せる江戸柄の細工装飾が盛んになりました。
 漆喰は鏝絵と呼ばれる技法で、武者絵や龍虎、仏像などのレリーフがあります。伊豆の長八などは有名です。
※伊豆の長八:幕末から明治にかけての漆喰職人、なまこ塀で有名、伊豆に美術館がある。柘植義春の漫画にも、「長八の宿」の作品がある。

大口

 住んでいる近くで、こんな鏝絵風タイルが残っていました。もう無いかもしれないな(横浜市大口通り付近)。昔は一般の家庭の戸袋に漆喰が塗ってあり、凝った方は鏝絵を施してありました。もともとは防水のためで、平塗で色があっても地味なものが多かったです。


戸袋のデザイン 三ヶ森建工のタイル絵 2001年8月2日

戸袋のデザイン 立体的で鏝絵のよう、泉水に松、離れ家かな 2001年8月2日


 一般的なトタンの戸袋はこんな様なもの大多数で、味気がありません。


野毛のクリーニング屋さんの波型トタン 2000年3月21日

 銅版の戸袋は結構残っています。
 まずは、大口駅の西側にあるお宅、隣に「祐鮨」と言うお店がありました。火事で焼けてしまい空き地になっています。ここのお隣の家に残っていました。
 駅のホームから眺めていると、正面の(元のお店の2階)外壁だけでなく、奥の建屋の戸袋も銅版葺きであることが判りました。
 灰色に塗られていたので、銅版だとは思いませんでした。(ブリキかなあ?戦後は塗料の入った缶の蝋付けを熔かして、銅版風に広げて伸ばし、屋根材に使っていました)
 戸袋の柄は、上から、亀甲、桧垣、七宝輪違、青海波です。一か所に沢山のサンプルを、詰め込んだって感じです。元は屋根屋さんだったかなあ。


道路に面した外観 元は屋根屋さんかも 2016年7月15日

中々凝った戸袋 亀甲、桧垣、七宝輪違、青海波 2016年7月15日


少し横に回りこんでみます 2016年7月15日

おっ、ここにも菱紋の戸袋がありました 2016年7月15日

 やはり時代の波は、ここの御宅にも訪れてきました。お歳を召したご夫婦が住まわれていましたが、あっという間に更地になってしまいました。


更地になった屋根屋さん 2019年2月16日

品川

 次は北品川にあった金物屋さんの看板です。これは緑青が吹き出ているので、銅版だと判ります。中の文様は亀甲です。


戸袋のデザイン 金物屋全景 2007年8月25日

戸袋のデザイン 看板詳細 亀甲紋 2007年8月25日


横須賀 汐入

 次は汐入から横須賀中央に歩いたところにあったお店の戸袋で、ここも金物屋さんだったかも。文様は亀甲です。


戸袋のデザイン 石造りで一見蔵の様だ 2016年6月1日

戸袋のデザイン 前に回るとレトロな雰囲気 戸袋は亀甲 2016年6月1日

横須賀 逸見


 逸見の町中にあった洋館風の住宅の銅版です。洋風なデザインです。窓枠にタイルが使われており、モダンですね。


戸袋のデザイン 通りに面しており、モダンな佇まい 2016年6月1日

戸袋のデザイン 窓枠、銅板葺き屋根 2016年6月1日

戸袋のデザイン 窓枠、銅板葺き屋根 対して意匠は無いですが 2016年6月1日


 逸見の浄水場の近くの民家の銅板葺です。戸袋は、桧垣紋でした。ここは鬼瓦も銅版で、しかも破風は凝った細工物でした。


戸袋のデザイン 古民家の全景 2016年6月1日

戸袋のデザイン 戸袋は桧垣 2016年6月1日

戸袋のデザイン 凝った入母屋の破風 2016年6月1日


横須賀 安浦

 田戸台の旧横須賀鎮守府長官宅を見に行った時に、安浦の街中で見つけました。家の角には臼が置いてあったり、細長い建屋は味噌蔵か酒屋をイメージさせますが、それにしては家の作りが小規模です。二階の窓の手摺にも銅細工が施されています。


戸袋のデザイン お味噌か煎餅の製造所のような和の建物 2018年4月7日

戸袋のデザイン 戸袋の銅細工は麻の葉紋 2018年4月7日

戸袋のデザイン 手摺がまた凝っている 2018年4月7日

戸袋のデザイン これは臼ですね 2018年4月7日

戸袋のデザイン 向こうに蔵があるし味噌蔵かなあ 2018年4月7日

月島


 月島の町の中にあったお店が、全身銅版葺きでした。不動産会社の持ち物のようです。戸袋の文様は、桧垣紋です。


戸袋のデザイン 全身紋々があるような何か異様な圧迫感がある 2008年11月2日

戸袋のデザイン 戸袋は桧垣 小窓は格子紋か菱紋か 2008年11月2日


生麦

 生麦の街並みにも多くの銅板葺戸袋が残っています。


戸袋のデザイン 生麦の漁師町 甲 2004年10月24日

戸袋のデザイン 生麦の漁師町 甲拡大 亀甲紋 2004年10月24日

戸袋のデザイン 生麦の漁師町 乙 2004年10月24日

戸袋のデザイン 生麦の漁師町 乙拡大 これは何紋だろう 2004年10月24日

戸袋のデザイン 生麦の漁師町 丙 2004年10月24日

戸袋のデザイン 丙拡大 桧垣紋 漆喰ではないモルタル壁 2004年10月24日

上野界隈

 上野界隈にも銅板の看板が残っていました。以前、上野はオートバイ屋のメッカでした。「光輪」と言うお店が、数十軒もありましたが、何か運営が行き詰まって一軒も無くなってしまいました。その「光輪」効果を狙ったのか、それ以外のオートバイ屋さんも多かったです。ここもその一つですが看板が桧垣紋です。


戸袋のデザイン 看板が桧垣紋 2016年7月19日

戸袋のデザイン 看板が桧垣紋 下は斜市松 2016年7月19日

戸袋のデザイン 普通のお宅だが外壁が銅版葺き 一文字葺きか 2016年7月19日

 
上野界隈を歩いていたら、お宝に遭遇してしまいました。
何と言ったら良いのでしょうか、1階が和風、2階が洋風のこの建物、素晴らしいクウォリティです。大正、昭和と言うよりは、明治、大正の下町の分限者と言う感じです。2階の窓の上の半円形の部分には、、青海波の変形でしょうか、アールヌーボー的な紋様に見えます。

 もう一か所は、今までと同様の銅板張りで、上野ではあまり感動しなくなっちゃいました。


戸袋のデザイン 全体に緑青が回り趣があります 2016年10月19日

戸袋のデザイン 昔は何かのお店だったんでしょうか 平板葺き? 2016年10月19日

戸袋のデザイン もう一つの仕舞屋 2016年10月19日

戸袋のデザイン 柄がお分かりになりますでしょうか オーソドックスな桧垣紋 2016年10月19日

戸袋のデザイン 上野学園の前にあるお宅 2017年1月4日

戸袋のデザイン 2階の戸袋が銅板葺 2017年1月4日

戸袋のデザイン 変形の縦矢絣か 2017年1月4日

 お正月なので、下谷神社にお参りしました。するとその界隈に銅板葺のお宅がわんさかありました。こんなに見つかって大変うれしい。
 それと別に、神社の前の通りにあったこのつくりのお宅。置屋か小粋な割烹のお店だったのかな。


戸袋のデザイン 下谷神社 2017年1月4日

戸袋のデザイン 下谷神社の奉納舞台 2017年1月4日

戸袋のデザイン 下谷神社の参道にある変わった建物 2017年1月4日

戸袋のデザイン ドーム屋根に遊郭の入り口? 2017年1月4日

戸袋のデザイン 下谷神社の北にあった紙工場 戸袋は桧垣紋 2017年1月4日

戸袋のデザイン ここの長屋が飛び飛びに銅版葺 2017年1月4日

戸袋のデザイン 一軒目は平板目違い葺き 2017年1月4日

戸袋のデザイン 二件目も同様な葺き方です 2017年1月4日

戸袋のデザイン 三軒目も同じでした 何か残念 2017年1月4日

戸袋のデザイン 下谷神社の南側です 三軒長屋ですが平板目違い葺です 2017年1月4日

戸袋のデザイン 交差点にあった銅板葺の家 2017年1月4日

戸袋のデザイン 戸袋は麻の葉紋かな 2017年1月4日

戸袋のデザイン もう一つの小さめの戸袋も同じ文様 2017年1月4日

戸袋のデザイン 正面2階の戸袋は細い桧垣紋か綾杉紋 2017年1月4日

戸袋のデザイン 細い桧垣紋か綾杉紋 2017年1月4日


戸袋のデザイン ちょっと面白いデザイン 下谷教会 2017年1月4日