祖父伝:新たなる発見 


 先祖のお墓参りの後に、関内の歯の博物館に行ってみました。日出彦さんとうさおのおじいちゃんである、益田廣岱の遺品が展示されているところです。開港資料館で展示された遺品が、そっくりこちらの博物館に置いてあります。
 前もって見学の申し込みをしたので、すぐに事務局の方が案内をしてくださいました。なんとあの大野先生が博物館に来ていただいており、特別に詳しい話をして下さるとか。感謝、感激です。
 博物館の中に入ると、いきなり床に大きな幡がおいてあります。「西洋象印歯磨」と大書されており、傍らに日本橋とか、神田神保町のお店の名前が書いてあります。
 昔の店舗には、店先にこのような大きな幡が斜めに掛けられていましたね、宣伝と日除けに用いられたのでしょうかね。


祖父伝:新たなる発見 歯の博物館入口 2017年6月19日

祖父伝:新たなる発見 西洋象印歯磨の大きな幡 大野先生蔵 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 幡拡大 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 大野先生から講義を受ける日出彦さんとうさお 2017年9月20日

 大野先生によると、この歯磨粉を売り出していた企業家安藤福太郎氏は先生と御縁戚があるとのことでした。その当時の宣伝には祖父益田廣岱の名前も載っているとコピーを頂きました。この当時の歯磨粉に、「鹿印」か「象印」,「ライオン」が使われているのが面白いと大野先生は話されておりました。
 「鹿印」は「歯科印」の洒落でしょうね。


祖父伝:新たなる発見 象印歯磨の新聞広告 大野先生蔵 2017年9月20日

 ここに書かれている新聞広告文を見ると、レトロっぽくて涙が出ます。おじいちゃんの写真入りです。

象印齒磨

我國齒磨改良の指導者と其經營者
明治四十二年十一月一日(月曜日) 萬新報

齒科醫學博士 益田廣岱先生
英國醫學博士 マグドナルド先生
御用化學技師 新沼千代治
經營者     安藤福太郎(安藤井筒堂)



祖父伝:新たなる発見 同広告拡大 大野先生蔵 2017年9月20日

 大野先生によれば、当時は齒科醫學博士なる称号は無かったので、宣伝のために祖父に付けたのであろうということでした。安藤福太郎氏の自伝本のコピーも戴きました。大野先生のルーツと私たちのルールが微妙に交差しているように思えました。
 前にも書きましたが、益田の家は医師か、学校の教員で、ともに先生と呼ばれる職業に就いています。私たちの父は電気技師になったので、少し職業の方向が変わりましたね。日出彦さんも、電気技術者から大学教授になったので、「先生」返りしちゃいましたね。うさおは、相変わらず建築技術者のままです。

 「都新聞」の広告もすごいです。

齒磨の撰擇に迷ふ衛生家は學者に問へ 象印齒磨 は衛生材料廠に於いて試驗の結果
陸海軍御用の光榮を有せり


 面白いです。この宣伝と大きい幡はすごい発見だと思います。おもちゃ博物館の北原照久氏に鑑定してもらったら15万円程だったそうですが、いやいや、もっと価値があると思いますよ。これが現代に残っているのが凄い。


祖父伝:新たなる発見 象印歯磨の新聞広告2 大野先生蔵 2017年9月20日

 上の広告も別の新聞のもの、おじいちゃんの肩書が凄いです。

●陸海軍御用●近頃非常に名高きはみがき
米國シカゴ府・・・・・・・グレード會社製
象印齒磨粉 彼の米國にて世界に其名轟々たる齒科醫學博士「ウィルハム」氏の方劑にして當時シカゴ府に於いて非常の名聲を博し紳士貴婦人社會に賞賛せられたる良品なるを以て遣回弊店日本一手特約を結ひ洽く販賈す其の衛生上有効なるは辱くも左の諸大家の信認と証明により敢て喋々を要せず
シカゴみやげ 西洋象印はみかき 定價 三銭 六銭 十五銭
米國ハーヴハルド大學齒科醫學博士 日本齒科醫試驗委員 益田廣岱先生 御信認
東京築地居留地四番館 英國醫學博士 マグドナルド先生 御証明
 日本一手販賈 安藤井筒堂 井善油販賈店 東京蠣売町水天宮前



祖父伝:新たなる発見 象印歯磨の新聞広告3 大野先生蔵 2017年9月20日

 安藤井筒堂は、東京蠣売町貮丁目水天宮前にあったんですよと大野先生。安産の神社さんとして水天宮は知っていますが、蠣売町ってありましたっけ。今の蠣殻町の処でしょうか。当時の絵葉書がありましたので、参考に掲示しておきます。


祖父伝:新たなる発見 水天宮蠣売町絵葉書 2017年9月20日
http://www.tobunken-archives.jp/より参照

 広告の宣伝主の安藤福太郎氏の自伝本です。大野先生もルーツを辿る旅に大変な興味を注がれているようです。本の裏表紙は亀甲に上り藤の家紋で、なかなか珍しい家紋だと思います。亀甲ではなく、枠が細いので八角紋か隅切り角紋かもしれません。下に亀甲に上り藤紋などを示しておきます。


祖父伝:新たなる発見 安福翁自傳 大野先生蔵 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 亀甲、隅切り角、八角に上がり藤紋 2017年9月20日

安福翁自伝 抄訳(可能な限り旧字を用いました)

 やおら大野先生が、ガラスケースからその当時の歯磨き粉を取り出してきました。
「炭酸カルシュウムと泥(粘土かな?)を細かく粉砕したもの」だそうで、特別に触らしていただきました。何だか、こんな特別待遇をしていただくと、「ブラたもり」のタモリになった気分です。


祖父伝:新たなる発見 当時の歯磨き粉 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 まあ、触ってごらんなさいと差し出される 2017年9月20日

 これも珍しいもので、化粧品屋や薬剤店にあった、極彩色の絵看板です。関東大震災や戦災を逃れて、良く残っていました。ものすごい貴重品ですね。


祖父伝:新たなる発見 これも珍品、「象印歯磨」の販売店の看板 2017年9月20日

 歯の博物館には、歯科医療に係る歴史的なものが、数多く展示されています。大野先生たちが収集された展示物が多くなっていますので、もう一部屋くらい欲しいところですね。


祖父伝:新たなる発見 博物館内部 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 博物館内部 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 おじいちゃんの遺品 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 おじいちゃんの遺品 2017年9月20日

 江戸時代の御新造さんは、鉄漿で歯を黒に染めていました。鉄漿を付けているかいないかで、結婚しているかどうかが一目瞭然だったのです。今の奥さん方の様に娘時代と変わらぬ格好をされていると左手の薬指を見るしか分かりません。
 鉄漿はただ単に黒いだけでなく、虫歯の予防に有効であったそうです。で、これが、旅先で鉄漿を付けるための小分けされた袋です。携帯用鉄漿?


祖父伝:新たなる発見 携帯用鉄漿 2017年9月20日

 明治四十四年ころの治療費の規定、例えば「金冠 金八圓乃至拾五圓」とあります。今で言うと幾らに相当するのでしょうね。


祖父伝:新たなる発見 歯科医の料金規定 2017年9月20日

 日出彦さんとcaccoが夢中になって撮っていた「よ坊さん」


祖父伝:新たなる発見 よ坊さん 2017年9月20日

日本歯科医師会 キャラクター


祖父伝:新たなる発見 神奈川県歯科医師会外観 2017年9月20日

 大野先生の最近のご著書を教えて頂いたので、早速購入いたしました。大野先生は、歯学博士の称号を受け、日本歯科大学生命学部客員教授、昭和大学歯学部客員教授、北京首都医科大学客員教授で、神奈川県歯科医師会・歯の博物館館長をされています。


祖父伝:新たなる発見 ものと人間の文化史 177:歯 2017年9月20日
「ものと人間の文化史177:歯」 大野粛英 法政大学出版局 2016年11月16日

 それとは別にこのような美麗本を頂きました。


祖父伝:新たなる発見 歯的博物館 2017年9月20日

 祖父の記事を書かれている文献も戴きました。私たち孫にとっては、嬉しい限りです。


祖父伝:新たなる発見 神歯会誌創立110周年記念号 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 同44ページの祖父の名前 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 近代歯学史と神奈川 2017年9月20日

祖父伝:新たなる発見 同51ページ 祖父の記事 2017年9月20日


祖父伝:新たなる発見 8020会報10周年記念 2017年9月20日


祖父伝:新たなる発見 同61ページ 高橋紀樹氏の祖父の記事 2017年9月20日



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