ぶらりカフェ歩き
  山百合
           横浜・鶴見の喫茶店
                         健




 創業は1975年(昭和50年)。一杯ずつサイフォンで淹れる珈琲とナポリタンが売りでご近所の常連さんから長年愛されてきた老舗の喫茶店である。

 場所はJR鶴見駅から5分、京急鶴見駅からは徒歩2分ほど。商店街(ベルロード:旧鶴見銀座)と国道に沿った商業ビルに挟まれた三業地の中にあるので一般の人は入って来にくい立地ではある。写真の通り店の右側はかっての花街の面影を残すスナックが連なっている。
 数件ある飲食店を除けば夜間営業の店がほとんどなので日中の人通りは極めて少ない。しかしながらこの店は十字路の角地にあり角の壁を平らにして書かれたゴチック体の大きな文字が店の存在を目立たせている。
 店名の「山百合」は所在地の神奈川県の花が由来と思うが山小屋風の建物にマッチしている。
 実はこの店、随分前から気になっていたものの入店をためらっていた。理由はまず珈琲専門店なのに「スナック川上」の看板が目立っている事。入口の横には掃除用具やら冷凍庫が置いてあり何とも寂れた感じで人の気配がしなかったからだ。いつかは入って見ようと思っているうちにコロナ禍(2019年)が起こり休業状態となっていた。
 店主としてはコロナをきっかけに高齢、後継者のいない事もあり廃業を考えていたそうだ。
 そんな折、縁もゆかりも無い若き女性が後を引き継ぐことになった事で話題になり多くのメディアに取り上げられた。それが現2代目の慶野未来さんだ。元は小学校の教員をしていたが英語を学ぶため退職して海外留学を計画していたもののコロナ禍で出国できない時間を過ごしていた。そんな折、店と共通の知人から暇なら喫茶店やってみないと誘われたのが「山百合」。初めは断ろうと店に出向いたが店内の雰囲気に一目ぼれしこの店を残したいと決心したとの事。
 但し、引き継ぐと言っても運転資金・運営方法、店の料理、珈琲の淹れ方など全くの素人だったため解決する問題も多く紆余曲折を経て2021年10月に開業した。
 その後は、新しくスィーツを考案したり、店の売りのナポリタンを日本ナポリタン学会に認定してもらうなど現在進行形の挑戦を続けている。




神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央4丁目21-12 ·google mapより



常連さんが作ってくれたというお店のミニチュア

 今回、訪問のきっかけとなったのはシン・ドクガクの企画で「ぶらりカフェ歩き」をやるので、地元の「山百合」を取り上げて欲しいとの依頼があったからだ。
(うさおさんとcaccoさんはこの近所に住んで居ましたが、人気(じんき)が悪くて怖そうなので入るのはためらったそうです)
 実際に行ってみて(2024年10月)中に入ってみると席はカウンター3席、テーブル席5卓(6人掛け、4人掛け×3、2人掛け×2)。こじんまりとした一室。自分が入店した時はお客は2、3人ほど。ランチ時を外せばゆっくりできそうなので読書するには良いかもしれない。変わったところではBGM代わりにラジオを流している事。こういうのは理髪店ぐらいでしかないなあ。

 内装は、茶を基調とした落ち着いた雰囲気。エアコンは効いているものの天井の4枚羽根の扇風機が昭和感を出している。
 見わたせば家具やインテリア、可愛らしい雑貨がさりげなく配置されている。







 先代のマスターは花屋を営んでいたこともあるそうで壁面、レースのカーテンなど花柄のインテリアが多い。



 メニューは壁に張ってあり食事については写真付きになっている。

 ここの自慢は一杯ずつサイフォンで淹れるコーヒーとナポリタン。
 今回、自分が頼んだのはタマゴサンドとアイスコーヒー、写真のように具がたっぷりでボリュームがある。タマゴがこぼれないよう気を付けて食べた程。ナポリタンを食べたかったのだがカロリー制限、塩分制限があるので見送ったがテイクアウトができるので次はそれを利用するつもり。



 店を出る時、気になっていた事を聞いてみた。すると「スナック川上」は別のひとが2階でやっているとの事。客からは外観を見て「2階で生活しているの?」とよく言われるそうだ。

 補足として自分がよく見るTVで放映されたものを掲載する事にする。

【出没!アド街ック天国】TV東京(2022年5月7日放映)


 横浜の鶴見に出没。
 テロップには「横浜の濃ゆい下町」と、おとなしめに書いているが要は華やかなイメージとはかけ離れた下町の雰囲気漂うスポット、お店を紹介。
 「山百合」はディープな街角に佇む常連さんに支えられてきたレトロな喫茶店としてランクイン。
 夜、灯りが点いていないとやっているのかどうか分からないと常連さんが照明を設置してくれたほど。




【じゅん散歩】TV朝日(2023/9/12放映)

 じゅん散歩で高田純次が鶴見を散歩した時には山百合にも立ち寄っている。
 店の前には日本ナポリタン学会の幟が立っている。



 日本ナポリタン学会は横浜発祥のナポリタンを評価し地域の活性化を図る目的で結成された横浜の有志市民の団体。
ナポリタンは横浜のホテルニューグランドが発祥だが、もう一つ元祖とされいるのが野毛にあるセンターグリルというレストランだ。ニューグランドが高価な生トマトを使っているのに対し大衆向けに安価なケチャップで炒めて提供したのが今日のスタイルになっているからだ。因みにセンターグリルは会員になっているがニューグランドは会員にはなっていない。

 純ちゃんが訪れた時は奇しくもNHKの朝ドラ「ちむどんどん」の放映が終わっていたものの、その余波を受けて主要ロケ地の鶴見沖縄タウンと地域振興の企画が持ち上がり、その一つに横浜発祥のナポリタンとコラボして「やんばるナポリタン」キャンペーンのメニューが提供されていた時だった。






山百合のオリジナル「やんばるナポリタン」

 麵に沖縄そばを使いシーサーの蒲鉾が何とも可愛い。
(自分が訪問した時はメニューから外されていた。)



 因みにTIKAさんのスマホ写真館によく出てくる「喫茶店タンゴ」も日本ナポリタン学会の会員で、スクランブルエッグ、ラフテーとゴーヤの天ぷら乗せナポリタン(泡盛漬け島唐辛子添え)を提供した。


 鶴見を散歩の折り最も印象に残った風景を描いた一枚。

【ずん喫茶】BSTV東京(2024/08/10放映)

 純喫茶好きで知られるずんの飯尾和樹が各地の喫茶店を巡り飯尾目線で紹介する番組。
 以下は番組の映像から切り取ったもの。



 店を引き継いだ経緯や苦労話を聞く飯尾。





 店主や居合わせた客との会話が終わった後はおすすめのメニュー、もしくは飯尾が気になった物を、注文する段取りになっていて今回頼んだのはアイスコーヒーと自慢のナポリタン。



 訪問の最後に店への感想・コメントをコーヒーカップに書いて手渡すのが番組の儀式。



 自分が訪問した時、カウンター席の所に置いてありました。