今夜はシングルモルトウイスキーで!その4

≪ 元銀行員の独りよがりの四方山話 ≫ part 4



※ この著者は、話がすぐ横道にそれて元に戻るのに時間がかかる傾向にありますので、ご注意下さい。

5.素晴らしきボトラーズウイスキーの魅力について



 ウイスキーは基本的にボトラーズウイスキーとオフィシャルボトルの2種類に分類されます。
 ボトラーズウイスキーは、インディペンデント・ボトラーズ(独立瓶詰業者)が蒸留所から原酒を買い取り、独自に瓶詰されるウイスキーのことです。反対に蒸留所が製造から瓶詰のすべてをおこなうウイスキーのことをオフィシャルボトルと呼びます。
 つまり、ボトラーズは目利きのバイヤーが全国の蒸留所で数多くのカスク(樽)から試飲により厳選して最良と判断されたカスク(樽)だけを買い取り、そのままシングルモルトウイスキーとしてや、独自のブレンドでブレンデッドウイスキーとして瓶詰と商品化をおこなって販売しています。従って、蒸留所のオフィシャルボトルよりも、目利きのプロが厳選しているのでボトラーズウイスキーの方がより品質が高いとされており(その分、価格も高いのですが)、ボトラーズウイスキーのマニアが多い理由です。

(1) ボトラーズウイスキーの特徴
 ボトラーズウイスキーの特徴として、以下の3つがあります。
◎ 長期間の熟成が可能
ウイスキーは熟成期間によって、味が変化します。ボトラーズウイスキーは熟成期間を自由に設定できるので、オフィシャルボトルにない熟成期間のウイスキーを販売出来ます。従って、熟成期間による味の変化を楽しめます。
◎ 同じ銘柄でも、より個性的な味わいを楽しめます。
 同じ銘柄でも、カスク(樽)によって風味のバラツキがあります。オフィシャルボトルは蒸留所のブランドのイメージがあるので、安定して同じ風味を持つように生産されますが、ボトラーズウイスキーは必ずしも安定していません。よって、オフィシャルボトルとは異なる風味が楽しめるだけでなく、同じ商品を購入してもその都度、新しいウイスキーと出会えるのです。
◎ 限定生産で貴重なものが多い
 ボトラーズウイスキーは種類が豊富ですが、1つの商品の生産量は少なく、限定生産になることが多くなります。人気の蒸留所で製造された原酒を使ったボトラーズウイスキーが販売されれば、すぐに売り切れになり、その価値は販売価格よりも大きく高騰することも多いです。生産量が少ないことから、人気のあるウイスキーはプレミア価格になりやすいのです。

(2) お勧めのボトラーズメーカー



◎ ダンカンテイラー

ダンカン・テイラーはグラスゴーで創業したインディペンデントボトラーです。設立当初はスコッチウイスキー樽の商人およびブローカーでした。スコットランドの主要な蒸留所で充填される最高級の樽のみを提供するというこだわりを持っています。特に、21年以上熟成された最高品質のモルトウィスキーを選びボトリングしたピアレスコレクション・シリーズは、私が大好きなボトラーズウイスキーです。但し、最近は世界的ウイスキーブームに円安も加わり価格が高騰し過ぎて、ちょっと購入するのに二の足を踏んでしまい残念です。でも、最高の銘柄であることは保証します。


ダンカンテイラー ピアレスコレクション ハイランドパーク40y 1966

マッカラン 18年 1986 ダンカンテイラー・ピアレスコレクション

◎ ケイデンヘッド

 1842年に創業したスコットランドで最も古いボトラーズであり、正式名称はウイリアム・ケイデンヘッドです。ケイデンヘッドの代表的なシリーズは黒ケイデンシリーズで、古くから愛好家に愛され続けてきました。チルフィルターやカラーリングなどの加工を行わず、昔ながらの製造方法を守り続けている正統派ボトラーズです。


ケイデンヘッド グレンオード 2005 13年

◎ ゴードン&マクファイル

 イギリスで生まれた老舗のボトラーズであり、1895年に創業しています。蒸留所とのコネクションが強いためボトラーズの中でも味が安定しているのが特徴です。オフィシャルボトルに近いので、初めてボトラーズウイスキーを購入するならお勧めのブランドになります。


ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス カスクストレングス リンクウッド 25年[1997]

◎ ダグラスレイン

 1948年にタグラスレインが設立され、2013年にタグラスレインのスチュワート・レイン氏が立ち上げたブランドがハンターレインです。分社される形で立ち上げられたボトラーズですが、どちらもタリスカー蒸溜所との関係が深く、短期間で熟成されたタリスカーが販売されることもあります。タグラスレインの主力商品はリマーカブルリージョナルモルトシリーズとオールドパティキュラーシリーズです。特に、オールドパティキュラーシリーズは私のお気に入りの銘柄で、お勧めです。


ダグラスレイン オールド パティキュラー タリスカー 2012 10年 700ml

◎ シグナトリー

 1988年に創業したボトラーズの中でも新しいブランドです。シングルカスクにこだわりを持っており、製造するボトラーズウイスキーのほとんどがシングルカスクになります。
 ラベルには蒸留年月、ボトリングした日、カスクに関する情報(ピアレスコレクションも記載あり)などの詳細な情報を細かく確認できます。ボトルが独特で、格好良いです。


リンクウッド 1997 24年 シグナトリー 58.6% 700ml

◎ キングスバリー

 シグナトリーの翌年の1989年にシングルモルトのボトリングを始めたボトラーズです。
 シングルモルトは現在高騰していますが、キングスバリーには価格が控えめに設定されているボトラーズウイスキーもあるので、手を出しやすくなっています。蒸留直後に加水によるアルコール度数の調整をおこなわないカスクストレングスシリーズを販売しているのが特徴です。


リンクウッド 2007 14年 カスクストレングス 59.5度 700ml

(3) ボトラーズウイスキーはラベルも楽しい!


 ボトラーズウイスキーのもう1つの魅力に、ラベルの美しさがあります。ウイスキーキー自体を味合う楽しみだけでなく、ラベルもボトラーズウイスキーの楽しみの1つです。

◎ サマローリ (Samaroli )

 サマローリは1968年、イタリアで創業したスコットランド以外で最も歴史の長いインディペンデントボトラーです。そのウイスキーの目利きは業界の伝説となっているほどですが、卓越したラベルデザインも高い評価を受けています。サマローリのウイスキーを飲みながらラベルを眺めて、描かれた世界に想いを馳せるのは至福の時と言えます。また、ラムの目利きに関しても高い評価を受けており、私も時々はサマローリのラムも飲むようになりました。


サマローリ アイラ(ラフロイグ99%) 2017 43%

サマローリ・スペイサイド 45%(2018エディション) [1996]

サマローリ・デメララ・ダイヤモンド(2007) ラム

◎ シルバーシール (Silver Seal)

 同じようなイタリアのインディペンデントボトラーで、シルバーシールがあります。勿論、中身のウイスキーやラムにも評価が高いですが、ラベルも秀悦です。やはりイタリアは、デザインが優れていますね。シルバーシールは、どちらかと言うとウイスキーよりもラムに定評があります。


シルバーシール シークレットアイラ2011 53.9%

シルバーシール ラム パナマ 18年 BAR Feliz 10周年記念ボトル

◎ ブティックウイスキー (Boutique-y Whisky Company)




 ブティックウイスキーカンパニーは、ラベルに蒸溜所にちなんだ面白いストーリーやジョークなどがアメリカンコミック風に描かれているユニークなインディペンデントボトラー(有名ウイスキーショップ「マスターオブモルト」の運営)です。ラベルを見ているだけで、楽しくなってしまいます。一時はコレクションで集めようかと思いましたが、100種類近くありますので諦めました。


【ブティックウィスキー】ボウモア バッチ21 36年

ブティックウイスキー レダイグ バッチ5 19年

ブティックウイスキー スプリングバング バッチ22 20年 500ml 49.7度

◎ オーシャンズ・シリーズ(モリソン&マッカイ)



 インディペンデントボトラーのモリソン&マッカイ社が販売している、海洋生物をラベリングしているシリーズです。


オーシャンズ オルトモア 1998 20年 53.3%

ティーニニック 2009 12年 オーシャンズ

◎ 花と動物シリーズ




 花と動物シリーズは、UD社(ユナイテッド・ディスティラリーズ社)が所有する蒸溜所のシングルモルトをリリースしており、銘柄ごとに異なる花と動物を描いていることが特徴です。


花と動物シリーズ インチガワー 14年 スペイサイド シングルモルト スコッチウイスキー 43度

オスロスク 10年 700ml 43度 花と動物シリーズ UD.AUCHROISK

◎ ブロッサムズ・シリーズ


 「オーシャンシリーズ」と、販売元が同じシリーズです。


ブレンデッドウイスキー [1980-2021] 40年 シェリーバット【ブロッサムズ】

ブロッサムズ キャパドニック1988

◎ ヘンプ&スパロー・シリーズ




 オーシャンズやブロッサムズと同じ販売元で、ラベルデザインとしてはどうかと思いますが、麻雀の牌をラベルにしたシリーズです。


ヘンプスパロー クライヌリッシュ19年 一萬

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