グリコの観た!レポ 





いろいろあって、2023年9月号以来の投稿です。
2023年後半もいろいろ観ました。でもまだ序盤の4本しかレポ書けていません!
果たしてリアルタイムに追いつけるのか…?ぼちぼち書き進めてレポします!

◼️我ら宇宙の塵@新宿シアタートップス(2023/8/2、8/8)

演劇界イチの推し小沢道成くんことみっちーの新作。
さらに、みっちーの舞台に池谷のぶえが出ると聞けば、観ないわけにいかない。
池谷のぶえはナイロン100℃の舞台で初めて見た。おじさんの役をやっていて、どこからどう見てもおじさんだった。おばさんなのに。しかも当時はまだそこそこ若いおばさんだったろうに。
最近はテレビでも大活躍していて、ドラマ「妖怪シェアハウス」の座敷童子は超当たり役だと思う。劇中で毎回ある怪談の語りが天下一品!

みっちーは2017年に客演の劇団鹿殺しの舞台で見たのが初めて。ひとり纏っている空気が違っていてひきつけられた。
チラシを見たのか、HPを見たのか、みっちーは自分で作・演出もしていると知って、観てみようと思ったもののなかなか予定が合わず、何作か見逃したのちに2018年に「Brand new OZAWA mermaid!」を仕事終わりに逆方向の電車に乗って千歳船橋まで観に行った。
人魚姫を下地にした一人芝居で、みっちー自身が人魚姫を演じていた。
男女の良くないところを見せつけられるような、観ているこちらも主人公と一緒に傷つくような芝居だったんだけれど、それと比例するように美しい瞬間もたくさんあって、演じ手としても創り手としても好感をもった。
アフタートークでみっちーと目があったのは良い思ひ出笑

その後、2019年に観た「夢ぞろぞろ」で完全に心つかまれた。
会社に行くために電車に乗らなければいけないのに電車に乗れなくなってしまった青年と駅の売店で働くおばちゃんのお話し。こちらは二人芝居でみっちーは駅の売店のおばちゃんを演じていた。
こちらもラストが衝撃的で、劇中のラストシーンはとっても静かなんだけど、こちらがハッとするような…、うまく言えないけどすごいものを観たと思った。

その後、下北沢駅前劇場で行われた「鶴かもしれない2020」、会場を変えて行われた「May be a Crane ~鶴かもしれない/横浜版~」を観たところで、世の中はコロナに突入。
みっちーはそんななかでも精力的に活動を続け、2021年の「オーレリアンの兄妹」では岸田國士戯曲賞最終候補に選ばれた。コロナがこわくてすっかり劇場からも足が遠のいていたんだけれども、これはさすがに見逃したことを激しく後悔。今後は漏れなく見よう…と決意。
そして岸田國士戯曲賞最終候補ノミネート後初の新作として行われたのが今回の「我ら宇宙の塵」。

【あらすじ】
少年は、父の行方を探しに家を出た。
その少年を探しに、母も家を出た。
長い長い旅の途中、
出会った街の人に聞いてみた。
どこに行けばいいのか、と。
―遺された者達が辿る、宇宙と、この地球の物語。
パペット×映像テクノロジーの融合で描く、極上の演劇体験。



今作はパペットの星太郎(しょうたろう)を主人公に、星太郎が死んだお父さんを探す物語。
シアタートップスという小空間の舞台いっぱいにLEDパネルを張り巡らして、時に星空を、時に星太郎歩く町の風景を映し出す。

宇宙が好きなお父さんは星太郎に宇宙の話を聞かせ、当たり前に星太郎も宇宙が好きな子になった。
父親を亡くした星太郎は母親に「お父さんはどこへ行ったの?」と尋ねる。
母親は星太郎は宇宙が好きだから、この答えなら、と「お父さんはお星さまになったのよ」と答える。
すると星太郎は友達とも遊ぶことをやめ、学校の授業にも身が入らず、母親とも会話らしい会話をせず、空ばかりを見るようになってしまう。
そしてある日の朝早くひとり家を出て、父親を探すべく、事故の日の父の足取りをたどる旅に出る。
そして、母親も星太郎のあとを追いかけ、病院で看護婦と出会い、火葬場の職員と出会い、ともに星太郎の足どりを追うことになる。

みっちーの脚本は真剣な話をしているのにくすりとさせる、その配分が絶妙。
くすり、くすりとさせながら登場人物に親近感をもたせ、いつの間にか物語世界にどっぷりと連れていく。

みっちー本人はパペットである星太郎の遣い手であり、時に星太郎自身も演じる。
後半、お母さんが星太郎に堰を切ったように話し出すシーン。お父さんがいなくなって、自分の一言をきっかけに星太郎までもが変わってしまって…、お母さんは星太郎に向けて話していたはずがいつの間にか星太郎がお父さんに成り代わっている。この見事さよ。こういう表現は演劇ならでは。

宇宙を、星を頼りに、お父さんはどこに行ったのかに気づいた星太郎はやおら走り出す。お母さんも星太郎を追って走り出す。看護婦も、火葬場の職員もふたりにつられて走り出す。

ラスト、お父さんはどこにいったのか、との疑問に自分なりの答えを得た星太郎は世界の色を取り戻していく。
モノクロだった世界が色づいていくさまも美しく、呼吸も忘れていた母がいっぱいに息を吸い込む。
ラストは観ている皆が息をひそめるような緻密さの呼吸音と暗転。

みっちーはこれまで一人芝居、二人芝居を多く創ってきて、五人での芝居は今回が初めてだったわけだけれど、明らかに今作でまたひとつステージを上がったと思う。やっぱりみっちーは見逃せない…!との思いを新たにした。

️くるみ割り人形外伝@KAAT大ホール(2023/8/5)

真夏のクリスマス。真夏のくるみ割り人形。
作・演出は根本宗子。そんなに熱心に追っているわけではないけれど、なんだかんだと観てしまう根本宗子。
“おとなもこどもも楽しめる”がテーマのKAATキッズ・プログラムとして、この夏は3作が上演され、そのうちのひとつが根本宗子作・演出のこちらの舞台。

【あらすじ】
歌うことも踊ることも大好きで、感情ゆたかな少女だったクララ。
ある出来事がきっかけで、自分の感情をぜんぶ心の奥底にしまい込むようになってしまいました。人前では、楽しいことにも、好きなものにも、何にも興味がないみたいなふりで膨れっ面を続けながら、大好きなうさぎの人形だけに本当の気もちを話す日々をすごしていました。
そんな中でむかえたクリスマス。しかしクララが自分の気もちを隠してついたウソのせいで、世界中が大変なことになってしまった! クララはうさぎの人形の手を取り、一晩の大冒険へと向かう決意をします。クララとうさぎの冒険の先に待っているものとは…!



バレエの名作『くるみ割り人形』をもとにした音楽劇。音楽はチャラン・ポ・ランタンのアコーディオン小春。ボーカルももは歌手役で出演。
主演の少女クララはオーディションで選ばれた大橋凜乃/澤田杏菜のWキャスト。うさぎに歌舞伎界から中村鶴松、ストーリーテラーに刀剣乱舞や鋼の錬金術師のエド役で演劇界はおなじみの一色洋平、踊り子に振付師・アイドルとして活動する山之口理香子のバラエティー豊かな面々。
お芝居、音楽、歌と盛りだくさんでギュッと1時間。

アコーディオンの小春は舞台上での生演奏もあり、バックにはバンドも控えてキラキラ華やか。
一色洋平は相変わらずのコメディセンスとマッチョボディで客席をひきつける(ちなみに一色洋平は脚本家一色伸幸の息子さん)。
異色の歌舞伎俳優中村鶴松は和服で登場。雪のシーンでは太鼓が聞こえる歌舞伎の演出も。
キッズ・プログラムを謳ってはいるものの、メッセージはかつて子どもだった大人にもチクリとくるもの。舞台上は終始賑やかで楽しく、夏休みにぴったり。

◼️さいごの1つ前@逗子なぎさホール(2023/8/6)

自宅からも比較的近いKAAT(神奈川芸術劇場)で観るはずが、公演関係者の体調不良とのことで中止に。この舞台は本来「KAATキッズ・プログラム2020」として行われるはずだったもの。このときにも新型コロナウィルス感染拡大の影響で公演中止となってしまった。
よっぽどご縁がないのか…と思ったけれど、KAAT公演のあとに予定されている座間公演、逗子公演は開催されるとのこと。
ならば行きましょう、逗子まで!(遠いよ!)
ゲリラ豪雨もくぐり抜けて、行ってきました、逗子。

車窓から町並みを眺め、海の近づく気配にひとり盛り上がり、駅降りてすぐのソフトクリーム屋でソフトクリームを食べ、帰りにはちんまりしたかわいいおはぎ屋でおはぎを買って、なかなか楽しい小旅行。
京急逗子・葉山駅で行ったんだけど、せっかくならJRの逗子駅にも行ってみたかった。石原良純御用達のケーキ屋なんかがあるらしい。
しかしながら2週間前に足の小指の骨を折って、痛くて痛くてとてもそんなガッツはなく、今回は劇場までの経路にあるソフトクリームとおはぎだけで我慢。
逗子・葉山駅はのどかな雰囲気でよさげな店もあり、地元の人なのか服装も涼やかな人が多く、いかにも海辺の町のいい雰囲気。

【あらすじ】
ここは天国と地獄の分かれ道。カオル(白石加代子)はそこで忘れ物をして困っています。
天国に行くには「生きていた頃の記憶」がいるらしく…カオルの忘れ物はその記憶です。
集まった人間たちはカオルのためにあれこれ考えますが、そこに怪しいだれかが現れて…
カオルは無事天国へ旅立つことができるのでしょうか?



作・演出 松井周。
白石加代子演じるカオルとともに旅するのはビジネスで成功した若い男、グレてしまった若い女。そして案内人の怪しい男。
天国に行くには生きていた頃の「最高の思い出」が必要だそうで、若い男は自分ほどの成功者が天国に行かれないなんてありえない、となんとか天国に行こうとする。一方、若い女は自分のような者は地獄がお似合い、と自ら進んで地獄に行こうとする。

ビジネスの成功をアピールした若い男は天国に「最高の思い出」を認められず、何度も跳ね返されるがポロリと漏らした旅先で草原に寝そべった思い出が「最高の思い出」に認められ、天国へと旅立っていく。
グレた若い女はあろうことか息を吹き返し、生き直しに現世へと帰っていく。
そして最高の思い出どころか自分についてもあいまいなカオルさんは案内人の思い出話でなぜ自分の記憶があいまいなのかを理解する。そして、案内人に地獄でも天国でもないあいまいな場所に残るように勧められる。

中盤すこし間延びするようなところもあったけど、カオルさんの記憶のあいまいさのタネあかしがされるあたりからは鮮やかで、カオルさんが劇中で見せたときに看護師だったり鏡の前で髪をすいていたりという謎めいたシーンの挿入がカチリと噛み合い、目の前がひらけるような感覚。

キッズプログラムということで、事前に子どもたちとワークショップで作り出したいろいろな地獄の披露があったり、舞台上をあの世、客席をこの世として観客とのコール&レスポンスがあったり。子どもが多いだけあって、思わぬところで思わぬ反応もあったり笑、序盤はいわゆる観劇とは少し違うざわめきのなかで進んでいく。後半、話が進むにつれ、観客もぐっと舞台上に集中していった。序盤の演出が会場に一体感を生んだような。いい雰囲気。

カオルさんはあの世とこの世のあわいに残ることになるのだけれど、幽霊のトレードマークの例の三角のやつを着けて客席に降りてきて、観客と触れあいながらはけていく。
序盤の舞台上のあの世、客席のこの世の演出と繋がってうまい。

81歳の白石加代子が、かわいらしい少女、悪女、無垢な老女とくるくると表情を変え、エネルギッシュに舞台を引っ張る。
若い二人はフレッシュに、狂言回しの役割を担う久保井研も唐組の方だそうでさすがの存在感。
特別な演出もたのしく、指の折れた足を引きずって逗子まで行った甲斐があった。よき夏の思ひ出。

■燕のいる駅@紀伊國屋ホール(2023/9/28)

MONO主宰の土田英生作・演出。
というよりもドラマ半沢直樹の「電脳雑伎集団」の社長役の人、と言ったほうが世の中的な知名度は高そう笑
MONO観てみたいのと、みっちー出演とのことで紀伊國屋劇場へ。

【あらすじ】
のどかな春の日の午後、燕が巣を作る季節。
埋立地に位置する、テーマパークの最寄り駅「日本村四番」でのこと。
駅員と売店の女、その友達、電車に乗り遅れた会社員らが集っていた。
彼らのたわいもないやりとりは、ごく日常の一コマのようでおだやかな時間が流れている。
ただ、いつもと違うのは電車が一向に来ないこと。
そして他に人の気配がないこと。
そして空には奇妙な現象がおきていた……。



舞台は世界の終わりのとある駅。
序盤はコメディタッチで舞台上から大いに客席を意識した演出で観客を笑わせにかかってくる。
が、徐々に世界の終わりを匂わす不穏な空気に。

いつも自作ではクセのある役を演じがちなみっちーの普通の人の芝居(背景にはいろいろあるし、一筋縄でいかない人物ではありそうだけど、いわゆる普通の人だ)を見たのも新鮮。そしてとてもよかった。
脚本はひたすら救いなく。すごく今っぽいと思ったけど、1997年初演の作品なのだそう。

作・演出の土田英生は「『燕のいる駅』は、世界の終わりを淡々と描写するだけの作品です。(中略)自分の作品の中でこれほど広がりを見せた作品はありません。
だからこそ、もう自分でやるつもりはありませんでした。
しかしコロナ禍がありました。人が消えた街の景色は、私がこの作品の中で描いた世界にとても似ていました。『燕のいる駅』がフィクションではなくなったと感じました。もう一度だけ、この作品を作りたいと思いました。」(公式HPより)というコメントを寄せており、現実が世界の終わりに似ているか…なるほど…と空恐ろしい気持ちになったのでした。


【その他に観たものたち2023後半】
■ベルマインツ/下北沢 BASEMENTBAR(2023/8/24)
■ベルマインツ/下北沢 mona records(2023/8/26)
■自由学園明日館/明日館レストラン(2023/8/27)
■いつぞやは/シアタートラム(2023/8/29)
■Slow LIVE'23/池上本門寺(2023/9/1)
■玉置浩二 Concert Tour 2023 故郷BAND 〜田園〜/カルッツかわさき(2023/9/7)
■ひげよ、さらば/PARCO劇場(2023/9/14)
■象眠舎 back "2" back/COTTON CLUB(2023/9/16)
■大相撲9月場所/国技館(2023/9/18)
■ベルマインツ/神戸クラブ月世界(2023/9/23)
■アーツ・アンド・クラフツとデザイン~ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで~/そごう美術館(2023/9/30)
■日本近代住宅史 旧朝倉家住宅 見学の会/自由学園明日館 公開講座(2023/10/19)
■野外劇『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』/東京駅行幸通り特設会場(2023/10/22)
■夢枕版『怪談 牡丹灯籠』白石加代子×神田伯山+邦楽コラボレーション/イイノホール(2023/10/24)
■白石加代子の阿部定「百物語 阿部定事件予審調書」/亀戸文化センターカメリアホール(2023/11/15)
■「Augusta Camp in U-NEXT~Favorite Songs~」Vol.6さかいゆう/ Shibuya duo MUSIC EXCHANGE(2023/12/1)