大阪の名建築を巡ってみる⑧
          杏雨書屋
                                                       うさお&Cacco

※淀屋橋の界隈は昔から続いた中小企業の会社が多い。そしてその建物はレトロで親しみやすい。今回は歩くルートをCaccoが事前に選定してくれたもの。見たい建築は12にも及ぶが、うさおの脚がCaccoに及ばないので、歩く速度、歩ける距離(途中休みを入れながら)に制限があるので、9ヶ所に厳選しました。何しろこの後、甲子園に行かなくてはならないので、時間的にも強行軍でした。

武田科学振興財団 杏雨書屋

 船場ビルディングを探し回っている途中で出会ったビルです。煉瓦タイルの外壁やボイラーの煙突など、レトロ感のある建物に遭遇しました。この建物は武田道修町ビルと言います。役所か図書館を思わせる外観です。


杏雨書屋  2023年9月12日

 玄関に回ってみると、「武田科学振興財団 杏雨書屋」とあります。本屋さん?それにしては重厚な建物だなあ。


杏雨書屋 玄関 2023年9月12日

 武田科学振興財団は、武田薬品工業株式会社からの寄附を基金として、「科学技術の研究を助成振興し、我が国の科学技術及び文化の向上発展に寄与する」ことを目的として設立されました。
 サイトの情報によると、杏雨書屋は「きょううしょおく」と読むそうです。これはちょっと読めないなあ。杏雨とは杏林(医学)を潤す雨の意だそうです。
 「五代武田長兵衞氏(武田和敬翁)は、1923年9月、関東大震災により東京で貴重な典籍が灰燼に帰したことを大いに痛嘆し、日本・中国の本草医書の散逸を防ぐことが、将来、社会・学界のために極めて有意義であると考え、早川佐七氏蔵書、藤浪剛一氏蔵書などを、機会に応じ私財をもって購入し、後に「杏雨書屋」と呼ばれる文庫を形成しました。」
 成程、これは日本の医学界に貴重な資料を残す事業なんだな。本草と言うと漢方医学のことかな。ひい爺さんが漢方医だったと聞いているので親しみが持てるぞ。


杏雨書屋 南側の外観 2023年9月12日

杏雨書屋 交差点から 2023年9月12日

 この建物は道修町通と中橋筋の交差点に面しています。設計は片岡建築事務所の松室重光で他に「京都府庁旧本館」を手掛けています。施工は大林組です。外観の茶色の部分は煉瓦積みで、黄色の部分は組積造です。窓の框や枠は同じ石を用いています。少し部分的に見てみます。

黄色い石のファッサード

 上面にはレリーフがあり、何かの文様があります。4弁の花のようです。武田家の家紋かと思いましたが、菱紋じゃやあないしなあ。だいたい家紋で4弁は珍しい。花菱、木瓜くらいだけど、木瓜は輪切りの形だからね。やはり西洋の花をイメージしたのかな。
 松室重光は古代様式の権威であったそうだから、この石の柱も西洋の様式から採ってきたのかな。
 この黄色い石は、日華石かもしれないぞ。この石は凝灰岩で国会議事堂とか、武庫川女子大学の甲子園会館(旧甲子園ホテル)などに使われているんだって。それなら阪神タイガースにも繋がりが出てくるぞ。

アーチ窓

 手前の窓は潰してあるけど、反対側にも同じものが有る。

 
杏雨書屋 窓とファッサード 2023年9月12日

杏雨書屋 西側交差点より 2023年9月12日

杏雨書屋 道修町通から 2023年9月12日