読書評 新宿鮫 うさお

                  
 
 大沢在昌・著/光文社

「鮫島の貌」光文社
「絆回廊」 光文社

「暗約領域」光文社」
「黒石」  光文社

 ミルキーから「新宿鮫シリーズ」の最新刊をお借りしました。 「絆回廊」からは丁度読んでいないので、楽しく読ませて頂きました。しかし、あろうことか「黒石」を「暗約領域」より先に読んでしまいました。うさおは、お金が無いので学生の時から3本立の映画館に行っては、映画の途中から観て2本見終わってから、また最初の映画に戻り、後で頭の中で前後をくっつけて話の流れを理解していました。だから本でも、前後逆になっても大丈夫なんですけど、ガッカリしたことは確かです。認知症になっちゃったかな。

「鮫島の貌」は、刑事鮫島を中心にした短編集ですが、色々な登場人物のエピソードが語られており、まるでショウ・ウィンドのようです。中には人気コミックの両津勘吉や冴羽?が出てきて、少しエンターテイメンがすぎると思うところがありますが、大沢ファンにはたまらない一冊です。
 さて、この本の後書きの解説で気になった部分があります。少しその内容を引用してみますね。

 解説 北上次郎(文芸評論家)
 日本推理作家協会編『ミステリーの書き方』(幻冬舎二〇一〇年刊)は、大変興味深い書だ。四十三人の作家が、ミステリーを書くにあたって考えていること、注意すべきことを具体的に書いている書で、作家志望者はもちろんだが、ミステリーはどうやって成り立っているのか、ということについて関心のある方はぜひ読まれたい。刺激を受けること、必至である。
(中略)
 ね、面白そうでしょ。こういう項目が四十三も並んでいるのだ。それらについて作家たちが具体的に書いたり、語ったりしているのである。読み物としても十分に面白い。
 「新宿鮫」外伝でもある本書の解説を、どうしてこの本の話から始めたのかというと、その日本推理作家協会編『ミステリーの書き方』の中に、大沢在昌が「新宿鮫」について語った箇所があるからだ。テーマは「シリーズの書き方」で、インタビュアーは私である。
(中略)
 だから、こう書くにとどめておく。二〇〇四年のインタビューで、「鮫島にもう一度試練を与えるべきだ」と発言した私は、その試練の三つのかたちを提案している。それは次の三つだ。
   
 ①晶との別れ(死別ではなく生き別れが望ましい)
 ②強大な敵の出現
 ③庇護者である桃井の退場


 つまり、こういう試練を与えれば鮫島が剥き出しになり(試練がはたして必要かどうかはともかく、そうすれば鮫島が剥き出しになるということは作者も認めている)、傍観者としての立場を捨てざるを得なくなる、というのが、そのときの、そして今も変わらぬ私の「新宿鮫」論なのである(鮫島は一貫して傍観者ではないと作者が語っていることも急いで付け加えておかなければならないが)。たしかに剥き出しになりますね、とそのことだけは同意したとき、まさかそれが先の展開の示唆だとは思わなかったことも急いで書いておく。これ以上は書けないが、これが一つ。
 もう一つは、このインタビューで作者が先の展開を示唆していることだ。
鮫島はまだ人を殺したことがないこと。で、そろそろ考えていること。その次にこう語っている。
「それも、憎いやつを殺すっていうよりは、殺したくない相手を殺さざるをえない状況下で殺すっていう小説にしたいなと。その対象は仙田かなと、実は今漠然と思ってるんです」


 「絆回廊」、「暗約領域」、「黒石」は連続した話で、中国残留孤児だった日本人が、日本に帰国が許されたが、中国人でも日本人でもない扱いをされ、独自の組織「金石」を結成して連帯していく中で、犯罪に加担したり遭遇していきます。秘密結社的な組織なので、中にいるメンバーも互いを知らないことも多々あるので、鮫島の捜査も遅々として進みません。さて、今回は・あらすじや感想を述べることはしません。本を読んでくださいね。
 「北上次郎氏」の解説にある、ストーリーを面白くする提案が3つほど述べられていますが、これらがこの3編の中で繰り広げられていることに興味を持ちました。後書きは2015年月20日には書かれています。
①青木晶はバンドのメンバーの薬物疑惑で、鮫島との仲が報道されるのを嫌い、別れを切り出します。大体ね、青木晶って国民的アイドルなんですって。そんな娘が鮫島にぞっこんだなんて話が出来すぎだよね。悔しいね、キーっ。
②中国残留孤児で永住帰国された方は6,725人でご家族を合わせると2万人を超すそうです。
一時帰国の方も6,000人を超すそうで日本国政府もなんと援助の手を考えてもらいたいね。話が逸れちゃったけど、強大な敵は「金石」ですね。
③「絆回廊」で桃井課長は殺されてしまいます。
 3つの提案はすべて実行されたことになります。この後書きは2015年月20日には書かれています。ふーん、インタビューを受けて色々喋っていると、何かヒントが浮かんでくるのかもしれません、やはりコミュニケーションが必要なんだな。コミ症のうさおは不得意な課題ですが。