Tomy jr.
成し遂げる事 < やり遂げる事?
2018年平昌五輪の金メダリスト小平奈緒は、2022年の北京五輪でメダルに届かず、同年に現役を引退しました。ベテランアスリートが引退するのは、日常的
(スタンダード) なことですが、小平選手が
競技終了後のインタビューで「(この大会で)成し遂げる事は出来なかったが、自分なりにやり遂げる事は出来た」と語った言葉は、私の心に刺さりました。
絶頂期だった平昌五輪で優勝した際、地元開催で連覇出来ず
涙した“親友”李相花(イ・サンファ)選手を優しく抱擁しながらウィニングランをしたシーンはとても美しく、日韓両国民の心を打ちました。そして自らの絶頂期に他者を思いやるのみならず、得意種目(500m)で17位と惨敗した北京五輪でも淡々と心境を吐露した
彼女は本当に人格者だと思いました。
【平昌五輪でのウィニングラン (THE ANSWERより)】
「成し遂げる=成果を出す」「やり遂げる=ベストを尽くす」と解釈すれば、彼女は長年にわたる現役生活において素晴らしい成果を残した天才アスリート*でした。そして誰よりも自らの実力の衰えを分かっていたはずの彼女が、
もし成果(メダルや記録)だけにコミットしていたなら、(成果に繋がらないと分かっているのに)ベストを尽くしたでしょうか。
それでも彼女はベストを尽くしたのです。彼女はインタビューで、(結果として)成果はあげられなかったが、(成果を目指して)ベストを尽くす事は出来たと言ったのです。でも
本当は「成果を出す事は出来ないと分かっていたけど、ベストを尽くした」のです。私はその点が本当に素晴らしいと思ったからこそ、その言葉は私の心に刺さったのだと思います。
私達は子供の頃から「目的を実現するために手段がある」と教わってきました。そして
目的を実現するための手段として「自らのベストを尽くすべし」と教わってきたように思います。でも小平奈緒の生き様を見たとき
「自らのベストを尽くすこと」は何らかの目的を実現するための「手段」ではなく、それ自体が「目的」なのではないかと思うのです。
もう一歩踏み込んで言えば、
「常に自らのベストを尽くし続けること」、これが誰にとっても「人生の目的」なのではないでしょうか?それによって何かを達成するなり成果をあげられたら素晴らしいですが、別に何も達成できなくても何の成果もあげられなくてもOK!つまり
「やり遂げること」こそが人生で果たすべき目的でありGOALではないかと・・・。
野球や将棋をやる子供が将来みな大谷翔平や藤井聡太になれる訳ではありません。プロ野球選手やプロ棋士を目標に掲げて、
いくら「自らのベストを尽くし」ても、県大会出場はおろか地元チームのレギュラーメンバーにさえなれないかも知れません。「だったらベストを尽くしても意味が無い」と手を抜くのは「利害得失」「効率・効果」的にはアリでしょう。
でも、
「やり遂げる」ことが人生の目的であると考えれば、成果をあげたり目標を達成したりして「成し遂げる」ことなど出来なくても全然問題ないのです。
どんなに下手でもダメでも「一生涯ずーっと自らのベストを尽くし続けること」さえ出来れば良いはずですから。 そして、それは誰にでも必ず果たすことが出来ることだと思うのです。(2023.8.10)
*:オリンピック日本女子スピードスケート史上初の金メダル獲得者。2010年バンクーバーオリンピック団体パシュート銀、2018年平昌オリンピック500m金・1000m銀、2017年世界距離別選手権500m金・1000m銀、2017年世界スプリント選手権総合優勝、ISUワールドカップ総合優勝(500m)。(
Wikipediaより)