Tomy jr.
寄席に行きませんか?(その1)
私は昔から落語や漫才、講談、浪曲、手品、音曲、曲芸等の演芸が大好きで、TVやラジオや最近ではネットでもよく視聴します。また自宅から比較的近い新宿の寄席には昔からよく行っていましたし、最近では会員になって四半期に一回は必ず足を運んでいます。講談や浪曲は別の機会として、
今回は最もスタンダードな演芸である落語のお話をします。
最近の落語界のニュースとしては、今やほぼ唯一の演芸TV番組となった「
笑点」の新メンバーが
春風亭一之輔になった事ではないでしょうか。六代目三遊亭円楽の病死による欠員だっただけに
候補者として三遊亭兼好や三遊亭蔓橘の名が挙がっていた事も演芸通なら頷けるでしょう。というのは、東京の落語界には主に4つの団体があるからです。
【「笑点」公式Webから】
最大の団体は「
落語協会」(以下「落協」)で約400人が所属、次が「
落語芸術協会」(以下「芸協」)で約250人、「
落語立川流」(以下「立川流」)が約50人、「
五代目円楽一門会」(以下「円楽党」)が約30人です。病死した
六代目三遊亭円楽は「円楽党」なので後継者として同じ団体の兼好や蔓橘の名が挙がっていたのですが、結果は「落協」の一之輔でした。
「笑点」はTV番組なので
所属団体に関係なくタレントとしての視聴者ウケを考えて人選するのでしょう。大喜利の歴代司会者は4団体を全て網羅していますし、現在の大喜利出演者7人は「落協」3人(木久扇、たい平、一之輔)、「芸協」3人(昇太、小遊三、宮治)、「円楽党」1人(好楽)です。では何故、所属団体に拘るかというと、寄席の事情があるのです。
現在の東京には毎日公演している寄席の定席は、「
新宿末廣亭」(以下「末廣亭」)、「
上野鈴本演芸場」(以下「鈴本」)、「
浅草演芸ホール」、「
池袋演芸場」の4か所*ですが、このうち「鈴本」は「落協」所属の噺家しか出演できず、他も10日間ごとに主催が「落協」「芸協」と入れ変わり、その間は原則、
主催協会所属の噺家しか出演できないのです。
つまり
後発団体の「立川流」や
「円楽党」は寄席の定席には原則、出演できないことになるので別の場所(
お江戸日本橋亭など)で興行を行っています。また出演の機会のみならず、前座、二つ目、真打など
噺家としての格を決める昇進決定も一門の師匠が勝手に決めるのではなく団体ごとに決定しますので、どこの団体に所属するかは噺家にとって重要です。
ですから「笑点」のように他の団体の落語家と同じ高座に上がるという事は、寄席や一門会等ではあり得ないのですが、一つだけ例外があります。それは毎年2月の「
高円寺演芸祭り」
の一環で、座・高円寺(杉並区立杉並芸術会館)で一夜だけ開催される「四派でドカン」です。この企画は4団体から噺家が一人ずつ出演してたっぷりと噺を聴かせてくれます。
【2023年公式Webより】
私は
ここ数年毎年この企画は観に行っています。出演者も各派それぞれの考え方が出ていて面白いのです。「落協」は毎年同じで
林家彦いち、「立川流」も
立川談笑で変わらず、「円楽党」は昨年まで三遊亭兼好でしたが今年は三遊亭蔓橘、「芸協」は毎回違う人で一昨年は
三遊亭遊雀、昨年は
桂文治、今年は
柳亭小痴楽でした。毎年、四派とも達者揃いです!
また最近は「末廣亭」でも「芸協」主催では「立川流」や「円楽党」の噺家が一枠ずつ出演できるようになってきました。また従来、講談は色物(落語以外の演目)として寄席に入っていますが「芸協」主催では浪曲も入るようになり、新進気鋭の
玉川太福さんなども聴けるようになりました。この辺りはまた稿を改めてお話しさせて戴きます。(2023.8.10)
*:この4か所に
国立演芸場を加え、東京の(落語の)寄席定席は5ヶ所とする場合もあります。