今夜はシングルモルトウイスキーで!
≪ 元銀行員の独りよがりの四方山話 ≫ part 1
※ この著者は、話がすぐ横道にそれて元に戻るのに時間がかかる傾向にありますので、ご注意下さい。
1. 私がシングルモルトウイスキー飲むようになった訳
あれは、シカゴに駐在して間もない1986年の事だと思います。何気なく読んでいたゴルフ雑誌で、「寒風の吹くスコットランドのゴルフコースで、荒涼としたリンクスを眺めながら、スキットルからシングルモルトのラフロイグを飲むのは至福の時だ!」という記事が気になり、無性に自分も試してみたくなりました。まずはスキットルを買おうと、ダウンタウンのmacy’s(百貨店)で捜すと、あるではないか。確か20ドルぐらいだったと思いましたが、即、購入しました。
それにしても、スキットルが何故こんな歪曲した形状になっているかが気になり、調べてみました。当時、スコットランドやアイルランドではウイスキーに重税がかけられており、密造したウイスキーを尻ポケットに隠し持つ(別名ヒップフラスコ)為にスキットルは作られ、歪曲した形状になったと言われています。そして、スキットルが普及したのは米国の禁酒法時代で、酒場女がスカートの中にガーターベルトで止めたスキットルを隠し持っていたそうです。そう言えば、ビリー・ワイルダーの映画「お熱いのがお好き?」で、マリリン・モンローが太腿に隠していた艶っぽいシーンを思い出しました。
次に、リカーショップで「ラフロイグ18年」を買って、漏斗でスキットルに入れて準備完了。早速、翌週末にゴルフコースに行って飲んで見ましたが、衝撃が走りました。勿論、ウイスキーのストレートですから飲むと喉が熱くなって刺激的ですが、「何だ、これは!」というぐらいの薬臭さが驚きでした。(この薬臭さはピートによるスモーキーな香りなのですが、総てのシングルモルトウイスキーがスモーキーではなく、マッカランやスプリングバンクス等のように全くスモーキーでないシングルモルトもあります。)結局、ゴルフコースでスキットルからシングルモルトを飲むのは、その後2~3回で止めてしまいました。飲み過ぎると、帰りの車が飲酒運転になり危ないですよね。しかし、残ったラフロイグを家でチビチビと飲んでいると、この薬臭さが病みつきとなってしまい、シングルモルトウイスキーにのめり込んで行くのでした。
2.シングルモルトウイスキーの定義
ウイスキーの種別は多岐に亘って定義付けされており、知らないと恥ずかしい思いをしますし、知っていればウンチクも語れますので、覚えておいて損はないでしょう。
大麦麦芽だけを材料にしたのを「モルトウイスキー」、とうもろこし等の穀類を材料にしたのを「グレーンウイスキー」と言います。このモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜたものは「ブレンデッドウイスキー」と言って、広く世の中で販売されているのがこのウイスキーで、一般的には低価格品が多いです。但し、中には最高級とされるブレンデッドウイスキーもあり、「ロイヤルハウスホールド」は私の大好きなウイスキーの1つです。「ロイヤルハウスホールド」は英国王室ご用達の唯一のウイスキーで、特別に選りすぐられたモルトとグレーン原酒45種以上から造られたブレンデッドウイスキーで英国のみしか販売できませんでしたが、昭和天皇が皇太子時代に英国王室を訪問し飲んで非常に気に入られた事から、日本だけには販売が許可されたというウイスキーです。特に、名前の前にTHEが付けられた「ザ・ロイヤルハウスホールド」は特に厳選された最高級品とされ、通常品の数倍の価格(10万円以上)となっています。
「モルトウイスキー」の内、同じ醸造所のモルトだけで造られたものが「シングルモルトウイスキー」で、複数の醸造所のモルトを混ぜて造ったのが「ブレンデッドモルトウイスキー」です。しかし、「ブレンデッドモルト」が「シングルモルト」に劣るという訳ではありません。目利きの優れたブレンダーが様々な醸造所の樽から最高のモルトを選んで組み合わせたウイスキーは、シングルモルトを遥かに凌ぐ場合も多くあります。
更に「シングルモルト」の内、同じ熟成樽だけの原酒だけで造ったものを「シングルカスク」と言います。ちなみに熟成樽について説明すると、樽の材料としてはオーク材(ナラの木)が使われ、ホワイトオーク(アメリカンオーク)、スパニッシュオーク、フレンチオークの3種類があります。熟成樽には木の香りを付ける効用がありますが、他のお酒の熟成に使用した樽を再利用する事によってそのお酒の香りも付けたす場合もあります。ホワイトオークではバーボン樽、スパニッシュオーク(最近はホワイトオーク)ではシェリー樽、フレンチオークではワイン樽が再利用されます。私はシェリー・カスクが大好きで、特に「マッカラン18年シェリーカスク」がお気に入りです。その他にも、最近はジャパニーズオークとしてミズナラ材が注目されており、「山崎ミズナラカスク」が有名です。
紛らわしい名称で、カスク・ストリングス(カスクタイプ)というものもあります。一般的に販売されているウイスキーは、原酒に加水してアルコール度数42°程度に薄めています。この加水を行わず原酒のみで造られたものをカスク・ストリングスと言って、アルコール度数は50~60°と非常に高いです。ちなみに、バーボンウイスキーのこのタイプはバレル・ストリングスと言います。
2. シングルモルトウイスキーの飲み方
シングルモルトウイスキーの飲み方は、オンザロック、ストレート、水割りと何でも良いと思います。私は、オンザロックでチビチビと飲むのが好きです。但し、最近流行りのハイボールは、個人的には折角の香りや重厚で複雑な風味が薄まってしまいそうでお勧めできません。特に、フルーティーな香りを楽しむシェリーカスク・タイプや奥深いフレーバーの熟成年数の高いヴィンテージ物には、合わないと言われています。
もし、お気に入りのシングルモルトウイスキーがありましたら、「トワイスアップ」という飲み方を1回試して下さい。まず、飲み口が狭まったティスティング・グラスを、用意します。それから、グラスにウイスキーを入れて、同量の常温の水を1:1の割合で静かに注ぎ込みます。そして、グラスに鼻を近づけて香りを楽しみ、少しずつ口に含みながら、口全体に拡がっていくフレーバーを味わって下さい。この飲み方が、ウイスキー本来の香りを最高に引き出すと言われています。尚、ワインのようにグラスの足の部分を持って静かに回してスワリングすると、更に香りが楽しめるのですが、ちょっとキザっぽい感じになりますね。
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