読書評 日出彦

 続 鯖猫長屋ふしぎ草紙 (一)




 
前回、鯖猫長屋の本を紹介しました。現在のところ11巻まで出ているそうなので、表題に“(一)”を付けて区別することにしました。紹介した中で、長屋の住人がどの部屋に住んでいるのか推理した話をしました。前回は拾楽が木戸に近い角部屋で、その隣がおてるの家というところまで書きました。その後、もう一度(一)を読んでみたところ、幾つかの部屋の住人が予想できました。
 下図がその結果です。拾楽の部屋が割長屋の右棟か左棟か分からないので、この図では表通りに近い木戸から見て右の棟に決めて描いています。拾楽の部屋の前の住人は亡くなった以吉のはずです。鯖猫は拾楽の部屋で威張っています。なお、井戸と厠の位置は適当です。
この図で?の部屋のどこかに
 
・小間物屋の清吉・おみつと赤子の家族
 ・居酒屋の料理人利助・おきねの夫婦
が入っているはずです。そのほかは、空き部屋なのか誰か入っているのか記述がないのでわかりません。青字で書いたのはその住人の職業です。商売をやっている人たちはこのような長屋の住人なので棒手振(ぼてふり;現在の移動販売または訪問販売?)です。



 と、ここまで書いてきたところ、急転直下の落ちがありました。

 「鯖猫」は初版がハードカバーでしたが、その後は、それも含めていきなり文庫のシリーズになっています。最寄りの図書館に入って調べると(十)まで入っていました。
 そこで、とりあえずその(二)と(三)を借りて、家に戻ってそれらをパラパラッと見ていたら、なんと(三)の冒頭に鯖猫長屋付近の絵図と長屋の見取り図が掲載されているではありませんか!

 それでは早速それらの図面を載せてみましょう。まず、鯖猫長屋付近の絵図(地図)で、鯖猫長屋の位置を示しています。前回紹介した宮永町(宮永丁)そのものですね。



 次に鯖猫長屋の見取り図を示します。これを見ると、拾楽の家は左側の棟の角部屋でした。上で推理した図面を上下反転する必要があります! なるほど、井戸からどぶが流れているのですね。第三巻の時点で、井戸に近い後ろの2軒が空き家になっていました。また拾楽には飼い猫が増えているようです。
 ?のところは予想通りの所帯が入っていましたが、小間物屋のところの赤ちゃんは市松というらしいですね。拾楽の向かいの部屋は涼太となっています。第三巻の時点では、空き部屋ではないようですね。

 というわけで、長屋の見取り図作りは作者のサービスでほぼ必要なくなりました!
今後、(二)巻以降を読み進めて、何か謎がありましたら、解明したいと思います。


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目次:  其の一 (ねこ)()(しゅう)(らく)  (問わず語り)義賊 黒ひょっとこ
     其の二 開運うちわ   (問わず語り)お智
     其の三 いたずら幽霊  (問わず語り)以吉
     其の四 猫を欲しがる客 (問わず語り)黒幕
     其の五 アジの人探し  (問わず語り)成田屋
     其の六 (にわ)か差配    (問わず語り)拾楽
     其の七 その男の正体  (問わず語り)おはま