≪ 元銀行員の独りよがりの四方山話 ≫
※ この著者は、話がすぐ横道にそれて元に戻るのに時間がかかる傾向にありますので、ご注意下さい。
1.カリフォルニア・ワインとの出会い
私が初めてカリフォルニア・ワインに出会ったのは、1993年のロサンゼルスでした。私にとってはニューヨーク、シカゴに次いで3回目の海外駐在でしたが、それまでのホールセール業務の海外支店ではなく、リテール業務を行う現地法人の普通銀行の責任者というものでした。米州での3回目の勤務という事で慣れているつもりでしたが、米国での初めてのリテールの銀行業務という事から驚くような出来事の連続であり、戸惑う事ばかりでした。例えば、ロサンゼルスは銀行強盗の発生率が世界で一番高く、1ブロック隣の銀行でも3カ月に1回ぐらい強盗に襲われていました。しかし、これは隣の銀行は銃を所持していない女性の警備員(銃を所持していない警備員の給料は安いから)を雇っていたせいであり、自分の銀行はコストの高い銃を所持した筋肉隆々で巨漢の警備員だから襲われないだろうと思っていましたが、結局、銀行強盗に襲われました。12月のクリスマスを翌週に控えた金曜日の朝、応接室で接客をしていた時にドスンという音があり、急いで応接から出てカウンターの方を見ると、ラテン系の男が倒れていて警備員が馬乗りになって押さえ付けていました。近くにいたブランチマネージャーに聞くと銀行強盗だという事で、ドスンというのは警備員が男を殴ってカウンターにぶつかった音でした。すぐにLAPD(ロサンゼルス市警)に連絡するように指示しましたが、警察が来るまでには30分近くはかかりました。銀行強盗は銃撃戦になる可能性が高いので、犯人に遭遇しないようにする為に20分以上過ぎないと警察は来ないと話には聞いていましたが、本当でした。
話を元に戻すと、着任した私がすぐに行う必要がある仕事の1つに、社外取締役への挨拶回りがあります。(米国の銀行では、役員構成の過半数は社外取締役にすべきという当局のガイドラインがあります。)一般的には社外取締役は、大手米銀の元役員、監査法人や弁護士事務所のパートナーがなります。それは、当時の社外取締役で大手弁護士事務所のパートナーであるH氏の事務に挨拶に行って、世間話をしながら和んでいた時の事でした。H氏から、折角、ロサンゼルスに来たなら、NAPAも近くにあるので、素晴らしいカリフォルニアワインを堪能して下さいという申し出がありました。それまでは、それほどワインに詳しく無く、特にカリフォルニアワインはあまり飲んだことは無かったので、どんな銘柄がお勧めですかと聞きました。すると、白と赤のどちらがお好みですかと聞かれたので、どちらかと言うと白ですと答えました。別にどちらでも良かったのですが、生カキが好きで、安いシャブリをよく一緒に飲んでいたからでした。(高いシャブリは生カキと一緒に飲むと、生臭いえぐみが出てしまいます。ちなみに生カキに最も相性が良いのは、本当は日本酒です。)H氏によると、白ならば、まだ新しいワイナリーですがキスラー(Kistler)というのが最近評判も良くて注目されていて、赤のピノノワールも素晴らしいですが、白のシャルドネは絶品であり、お勧めしますという事でした。海外駐在の仕事の1つに日本からのお客様の食事の接待が頻繁にあり、折角、海外だからという事で日本食ではなく、フレンチという要望も多く、その場合に悩むのはワインの選択で、お客様によってはワイン通の方もおり、変なワインを注文してはいけないという不安がありました。これは良い事を聞いたと、早速、接待で良く使うフレンチレストランのワインリストを見るとキスラーのシャルドネは必ずあり、もっぱらキスラーばかり注文していました。しかし、ロサンゼルス時代はそういう訳でキスラーは良く飲んでいましたが、特にカリフォルニアワインのマニアというほどではありませんでした。
カリフォルニアワインにのめり込み始めるのは、ロサンゼルスから帰国してからの事です。銀行では海外駐在から帰国すると、半年から1年ぐらいはリハビリとして検査部で過ごす事が多いです。私も帰国して検査部に在籍していた時、ちょっと風変わりな同僚がいました。彼はもう50歳近くで独身なのですが、典型的な趣味を生きがいにするオタクでした。その趣味というのが、オペラとワインでした。親と同居して独身という事もあり、給料の殆どはオペラとワインにつぎ込んでいるようでした。彼の話はもっぱらオペラとワインばかりでしたが、私もワインについては少し造詣もあり、話も盛り上がって興味もありました。彼は王道のワイン通ですので基本的にはボルドーやブルゴーニュのフランスワインが専門であり、カリフォルニアワインに関しての知識は私に毛が生えた程度あった事も、気が合った事に繋がったかも知れません。そうすると私のワインに関する知識も徐々に積み上がってきて、特にカリフォルニアワインに関しては調べたり、色々と購入して飲んでみるようになり、のめり込み始めました。
2.カリフォルニアワインに使用する葡萄
(1)シャルドネ
カリフォルニアワインの白と言えば、稀にソーヴィニオン・ブランもありますが、圧倒的にシャルドネです。アメリカ人は特に白ワインが好きで、パーティー等での飲み物と言えば白ワインか、ジンやウォッカのカクテルになります。その場合、白ワインではなくシャルドネと言って注文するのが普通です。発祥はフランス・ブルゴーニュ地方ですが適応力が強いので、世界中各地に多くの銘醸地があります。強い香りと爽やかな酸味と豊かな果実味が特徴で、多様性からテロワールが反映しやすく、造り手によって様々な味わいとなります。
(2)カベルネソーヴィニヨン
赤ワインに使用する代表的な品種で、ボルドー地方が原産です。タンニンが強い為、しっかりした酸味と渋味が特徴であり、熟成年数が若いとやや渋味が強くなりますが、熟成が進むに連れて徐々にまろやかな味わいとなります。
(3)ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方の代表的な品種で、「ロマネコンティ」に使用される事で有名です。カベルネソーヴィニヨンと比べてタンニンが穏やかで、果実味が強くて、まろやかな味わいが特徴です。個人的には、ピノ・ノワールの赤ワインは大好きです。
(4)メルロー
ボルドー地方が原産で、赤ワイン用の品種です。特徴としては、比較的酸味や渋味は弱めであり、果実味の豊かでまろやかな味わいのワインになります。実は、長年に亘ってメルローは飲まないと決めておりました。ワイン好き必見の映画として、「サイドウェイ」(2004年)という作品があります。小説家になる夢が捨てきれない負け組のダメオヤジですが、ワインに関してはやたら詳しい独身中年男が主人公で、やはりワイン仲間で俳優の友人とNAPAのワイナリー巡りするというロードムービーです。(ちなみに日本でリメイク化されており、「サイドウェイズ」という映画名で小日向文世が主演しています。)その映画で主人公が口にする「メルローは飲まない!」という決めセリフがあり、そんな訳の分からない理由から、何となく飲まないでいました。しかし、ある日、「シェーファー」のメルローを間違えて購入して飲んだ所、驚くほどまろやかで、とても美味しかったです。考えてみれば、世界最高峰のワインとされる「ペトリュス」はメルローですので、美味しいですよね。ですから、「サイドウェイ」に惑わされること無く、メルローも飲んで下さい。
3.お勧めのカリフォルニアワインの銘柄
(1)キスラー(Kistler)
キスラーは、1978年に「カリフォルニア・シャルドネのレジェンド」と言われるスティーブ・キスラー氏が創設したワイナリーです。キスラー氏は、元々は小説家志望で、スタンフォード大学で文学を学んでいましたが、ワイン造りの方にのめり込んでしまったという人物です。オーク材の樽の中で熟成させるというブルゴーニュ同様のワイン造り方を、カリフォルニアでいち早く確立させたのが特徴です。前述しましたように私が初めて出会ったカリフォルニアワインがキスラーであり、特に思い入れの深い銘柄です。勿論、白のシャルドネは秀悦ですが、赤のピノ・ノワールも絶品の味わいであり、是非、両方とも試してみて下さい。尚、キスラー氏は2017年にキスラーのワイナリーから引退し、ピノ・ノワールに特化した家族経営ワイナリー「オキシデンタル」に専念しており、「オキシデンタル」のピノ・ノワールもお試しする事もお勧めします。
(2)カレラ(CALERA)
1975年に、ジョシュ・ジェンセン氏が創設したワイナリーです。ジェンセン氏は、当時、カリフォルニアでは不可能とされていたピノ・ノワール造りに挑戦し、見事、成功させて「ピノ・ノワールのフロンティア」とされる伝説の人物です。ですから、カレラのピノ・ノワールは秀悦であり、「カリフォルニアのロマネコンティ」と言われています。実はジェンセン氏は若い頃に「ロマネコンティ」で働いており、ロマネコンティの苗木を密かにカリフォルニアに持ち込んでワイン造りをした噂もあり、実際に「ロマネコンティ」酷似した味わいとなっています。(真偽は、定かではありません。)従って、「ロマネコンティ」を1/10の価格で飲んでみたいという方には、カレラの「ジェンセン」と「セレック」をお勧めします。「ジェンセン」の方が有名ですが、カレラ・ファンには「セレック」の方が美味しいとされており、出来れば両方を飲み比べてみるのも面白いと思います。確かに、「ロマネコンティ」と比べて遜色はありません。
(3)レイミー(Ramey)
レイミーは、1996年にデーヴィッド・レイミー氏が妻と創設したワイナリーです。レイミー氏は若い頃はボルドーの「ペトリュス」で修業をして、「ドミナス」の副社長も務めた天才的なワイン醸造家です。私の最も好きなワインの造り手の一人です。彼は「シャルドネの魔術師」と言われるほどですから、まずはシャルドネがお勧めですが、カベルネ・ソーヴィニョンも素晴らしく、ピノ・ノワールやメルロー、クラレット等も何でも秀悦で美味しいです。白なら1万円前後、赤なら1万円台で購入できるので、コストパフォーマンスも良く、お手軽に飲めるワインです。
(4)ケンゾー・エステート(KENZO)
ケンゾー・エステートは、ゲーム会社「カプコン」の創業者である辻本憲三氏が1990年台から
NAPAでワイン畑とワイナリーの開墾を始め、世界最高峰のワインの造り手達を招聘して、2008年に漸くファーストリリースをした比較的新しいワイナリーです。日本人オーナーという事もあり、カリフォルニア・ワインとしては珍しく日本市場にも積極的に輸出しており、入手し易い事もあって、最近はもっぱらケンゾーのワインを飲んでいます。
かなり豊富な種類の銘柄をリリースしていますので、代表的な銘柄を下記にまとめました。
◎ 赤ワイン(グレードの高い順)
・深隠(shinon)
・藍(ai)
・紫(murasaki)
・明日香(asuka)
・紫鈴(rindo)
◎ 白ワイン
・あさつゆ(asatsuyu)
◎ ロゼワイン
・結(yui)
◎ スパークリング・ワイン
・清(sei)
個人的は、「あさつゆ」と「清」も好きですが、何と言ってもケンゾーのフラグシップ・ワインは「rindo」であり、クォリティの割には価格も1万円台半ばであり、一番のお勧めです。特に初期の2005~2009年物は、「カリフォルニア・ワインの女王」と言われるバシェット女史が造り手で素晴らしいワインとなっており、オークション・サイトで手に入る場合には少し位高くても、是非、購入すべきと思います。ちなみに、バシェット女史は、現在、夫婦でワイナリーを経営しており、特に、中々手に入りませんが、夫と共同で造った「バシェット&バシェット」は最高に美味しかったと記憶しております。
(5)その他
その他でも、お勧めしたいワイナリーとして、下記もあります。
◎ ドミナス
◎ シェーファー
◎ ケイマス
◎ アワーグラス
勿論、日本では「オーパス・ワン」が一番有名で、確かに素晴らしいワインですが、価格が高騰して6万円以上になっており、それなら上記のワイナリーの2~3万円台のワインを飲んだ方が良いと個人的には思います。カリフォルニアには数十万円以上のカルトワインも多数ありますが、カリフォルニア・ワインの良い点は、フランス・ワインに比べてお手軽な値段で美味しいワインを飲める事だと考えており、白なら1万円弱から2万円まで、赤なら1~3万円台のワインを飲むようにしています。
4.ワインの正しい飲み方と保存方法
(1)熟成年数
飲み頃の熟成年数ですが、白ワインならば、通常は1~3年熟成してから販売しますので、すぐに飲めます。逆に5千円以下の廉価ワインは劣化が早く、3~5年で酸化して飲めなくなりますので、買ったら早めに飲むべきです。1万円以上の白ワインなら、正しい保存状況でしたら、10年以上でも飲めますが、10年ぐらいでは飲んだ方が良いでしょう。
赤ワインの場合は、3年ぐらい熟成してから販売しますのですぐに飲めますが、個人的には少なくても5年以上、出来れば10年以上が飲み頃と思っています。但し、20年以上経過しますとコルクが劣化して割れてしまう場合が多く、開栓する時に注意が必要です。その場合、簡単な方法はコルクを押し込んでしまう事ですが、コルクの欠片が瓶に入っていますので、ワインを注ぐ時に茶漉しで漉して下さい。以前、レストランで食後に50年物のポート・ワインを注文した時、ソムリエが当たり前のように劣化したコルクの欠片をピンセットで少しずつ摘まみながら取って開栓しておりました。年代物ワインの場合は、予めコルクの劣化は覚悟しておいた方が良いでしょう。
(2)飲み方
ワインは、生きています。従って、開栓してすぐに注いだワインはまだ眠っており、香りも少なく、味も苦味が強すぎて「まろやかさ」もありません。美味しく飲むためには、十分に空気に馴染ませて「開かせる」必要があります。最も手軽にワインを開かせる方法としては、「スワリング」があります。「スワリング」とは、ワインが注がれたグラスをクルクル廻して、早く空気に馴染ませて開かせるものです。良くテイスティング等で、見かける光景だと思います。(気を付けて頂きたいのは、あまり廻し過ぎると、折角、醸し出された香りが飛んでしまいます。)しかし、前述のお勧めしたような重い赤ワインは、「スワリング」では十分に開かせる事は出来ません。そこで、お勧めするのは「デキャンタージュ」です。「デキャンタージュ」とは、ワインをデキャンタ(底が拡がったガラスの容器)に移す作業の事です。この作業により、より早くワインが開くようになり、もっと芳醇な香りが醸し出され、苦味も薄れてまろやかな味わいに驚くほど変化します。デキャンタへの注ぎ方は、なるべく空気に触れるように、ゆっくりと少しずつ注ぎ、瓶の底に沈殿した「おり」は入れないようにします。私の愛用しているプジョーのデキャンタにはプラスティックの漏斗が付いており、ワインを注ぐとクルクル廻ってオートマティックにデキャンタ全体に拡がるようになっていて便利です。デキャンタに入れてワインが開くまでの時間ですが、目安としては熟成年数10年ぐらいの赤ワインで1~2時間、20年以上ですと2~3時間と思います。しかし、ワインの種類やコンディションによっても、大きく変わってしまいます。そこで良い方法として、デカンタージュした時にテイスティング用に少しだけワイングラスに注ぎ、30分毎に香り・味をチェックする事をお勧めします。そうすると、時間経過に伴ってワインが開いて、驚くほど変化する事もわかって、別の意味で感動出来ると思います。でも、少し待っている時間が長過ぎますよね。大きくこの時間を短縮させる器具として、「エアレーター」という便利グッズがあります。エアレーターにワインを注ぎますと「エアレーション」を行う事が出来るので、より強く空気に馴染ませて開かせる効果があるのです。そこで、デカンタージュする時に、デキャンタの上にエアレーターを置いて、まずワインをエアレーターに注いでから、ワインがデキャンタに流れるようにします。こうする事によって、ワインが開く時間が半減します。また、エアレーターにはフィルターが内蔵されていますので、「おり」も取り除かれるので便利です。ついでに、もう1つ、魔法のような便利グッズをご紹介します。デキャンタを使用した後の厄介な事として、ガラスの内側にワインの赤い汚れがこびり付いても、中々、除去が出来ない事があります。そんな汚れをきれいに取り除いてしまうのが、デキャンタ用クリーナーです。このグッズは、容器にステンレスの小さなボールが300個ほどは入っているだけのものです。使用方法は簡単で、飲み終わったデキャンタの1/4ぐらいの水と一緒にステンレス・ボールを全部入れて、デキャンタを何回も廻して振るだけです。そうするとデキャンタのこびり付いた汚れは、すっかり無くなっています。使用したステンレス・ボールは洗剤で軽く注げば、何回でも再使用出来ます。それから重要な事ですが、デカンタージュしたワインは、スワリングする必要は無く、絶対にしないで下さい。(これは素人が行う事とされており、馬鹿にされます。)
タンニンの苦味のない白ワインは、「スワリング」程度で大丈夫でしょう。但し、熟成年数10年以上のしっかりした白ならば、軽く「デカンタージュ」か「エアレーション」する事をお勧めします。また、スパークリング・ワインには、このような作業は絶対に行わないで下さい。逆に炭酸が飛んで、気が抜けたものになってしまいます。
・愛用しているプジョーのデキャンタ
・エアレーター
・デキャンタ用クリーナー
(3)保存方法
ワインの保存方法は、勿論、温度調整が出来る「ワインセラー」で保管するのが一番確実です。しかし、下記の条件をクリアしていれば、瓶を1本ずつ梱包材に包んでダンボール箱に入れて、
冷房が効いた涼しい部屋のグローゼットに格納しても大丈夫です。
◎ 守るべき条件
① 日光(紫外線)には、絶対に当たらないようにして下さい。これはワインだけで無く、ウイスキーや日本酒、アルコール類全般に言える事ですが、日光(紫外線)にさらされると含有成分の一部が変質して、「日光臭(LST)」という異臭を放つようになります。日の当たるショーウインドーに酒瓶を置いてあるリカーショップをたまに見かけますが、このようなお店ではお酒を買わないようにした方が良いです。
② 瓶は必ず立てないで、横に寝かせて保管するようにして下さい。立てたままで長期保管すると、コルクがより乾燥してしまって劣化を早めてしまいます。
③ ワインの保存で最も神経を使うのは、温度管理です。10~20度が適温ですが、30度を絶対超えないようにすれば、お勧めしたようなしっかりしたワインなら、大体、大丈夫です。
④ 一旦、保存したら、そっと静かにしておいて、むやみに動かさないようにして下さい。ワインは、生き物です。折角、静かに寝て熟成している時に起こされたら、ワインにとってストレスとなり、「まろやかさ」が消えて尖がった味になってしまいます。
5.パリ・テイスティング事件
・当時のテイスティング・テストの光景
カリフォルニア・ワインの素晴らしさをお伝えするものとして、「パリ・テイスティング事件」(別名で「パリスの審判」とも呼ばれています。)があります。1976年、品質も良くなってきたカリフォルニア・ワインを、廉価ワインとしてフランスでも輸入販売を始める事業の宣伝活動の一環で、仏ワインVSカリフォルニア・ワインの飲み比べコンテストが企画・実施されました。
ルールは、下記の通りの実施となりました。
① 審査は銘柄が分からないようにするために、ブラインド・テイスティングとする。
② 白はシャルドネ、赤はカベルネソーヴィニヨンの2種類をコンテストする。従って、仏ワインは、白はブルゴーニュ、赤はボルドーになります。仏ワインは4本、カリフォルニア・ワインは6本を、それぞれテイスティングして採点する。
③ 審査員は9人で、それぞれ20点を持ち点として各ワインを採点し、合計点で順位を決定する。ちなみに、審査員はDRC等の有名ワイナリーのオーナー、三ツ星レストランのオーナーシェフやソムリエ、ワイン専門誌やグルメ誌の編集者の構成で、全員フランス人ですから、明らかに仏ワインにホーム・アドバンテージがありました。
誰もが白も赤も仏ワインが上位を独占すると思っており、企画事業者でも中位にカリフォルリニア・ワインが入ればそれで宣伝にもなるとの思惑でしたが、果たして結果は驚愕すべきもので大事件でした。何と白はモンラッシェを抑えてカリフォルニアの「シャトー・モンテレーナ」が1位となり(3位、4位、6位もカリフォルニア・ワイン)、赤も何とムートン・ロートシルトとオー・ブリアンを抑えてカリフォルニアの「スタッグス・リープ・ワインセラーズ」が1位となり、カリフォルニア勢の圧勝となりました。正に、世界中のワイン関係者を震撼させる出来事でした。勿論、このニュースが流されると、それまで見向きもしなかった世界中のワインショップから、カリフォルニアのワイナリーに注文が殺到しました。尚、この事件は、「ボトル オブ ドリーム」という題名で、ハリウッドで映画化されています。
後日談として、納得のいかない仏ワイン業界はその後2回リターンマッチを行いましたが、2回とも白も赤もカリフォルニア・ワインが1位になり、同じ結果でした。
6.最後に
これからワインを趣味にしたいと考えているが、ワインは奥が深く、知らない知識が沢山ありそうで、敷居が高く気後れを感じて二の足を踏んでいる人も多いと思います。確かにワイン愛好家と公言している人はかなりマニアックで、素人にはついていけないと思う事もあります。しかし、カリフォルニア・ワインに範囲を限定すれば、知識はこの程度で十分で、まずは月に1本ずつ飲んで、2年もすれば、あなたは立派なカリフォルニア・ワイン愛好家と言えます。カリフォルニア・ワインのもう1つの良い点は、本当に美味しいワインを飲むには仏ワインなら白で数万円、赤では3万円~数十万円となりますが、カリフォルニア・ワインなら数分の1の値段で飲めることです。特に、近年のワインの高騰には目に余るものであり、カリフォルニア・ワインは断然お勧めです。
さあ、今夜はカリフォルニア・ワインで乾杯しましょう!!
以上