グリコ
最近はちょっと時間に余裕ができたので、いろいろとお勉強に行っている。2月は庭園美術館の美術館講座へ。
今回は神奈川県立音楽堂へ。
2020年夏にBSテレ東で放送された『名建築で昼食を』。建築、喫茶店、お菓子などをテーマとしたエッセイスト甲斐みのりの「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」を原案にしたこのドラマ。
池田エライザ演じるカフェ開業を夢見るOL春野藤と田口トモロヲ演じる建築模型士の植草千明が「乙女建築」を巡り、名建築でランチを食べる(ちなみに春野藤ちゃんは根岸競馬場の見える素敵なレトロマンションに住んでいる)。
登場するのは自由学園明日館、東京都庭園美術館、山の上ホテル(うさおさんも行ってたね!)などなど、鉄板の名建築。そして2021年に放送されたスペシャルでは横浜編としてホテルニューグランド、そして前川國男設計の神奈川県立図書館、神奈川県立音楽堂が登場。
江戸東京たてもの園の前川國男邸は大好きなのに、こんなに近くに前川國男建築があることはすっかり忘れていた。
行ってみたいな~と思いつつ、それもまた忘却のかなた…。
そうして、いろいろをきれいさっぱり忘れた頃、神奈川県立図書館の新・本館オープンのネットニュースが。
忘れているうちに建て替えになったの?と焦って調べたところ、旧・本館は前川國男館として保存活用されるということがわかった。そして音楽堂のほうはいまも健在らしいこと、見学会もやっているらしいことがわかった。
これは忘れないうちに行かねば~。今度こそ。
そんなときTICAさんから「『名建築で昼食を』ってドラマ知ってる~?」とラインで連絡があり、あれよあれよと見学会に一緒に出掛けることに。
当日、TICAさんと桜木町駅で待ち合わせ、えっちらおっちらと紅葉坂をあがる。きっとウン十年前(学生時代)に来たことがあるはずだけど、これまたなんの記憶もない。紅葉坂は億ションと思しき真新しいマンション群と古くからあるだろうレトロマンションが共存する不思議な雰囲気。
坂をのぼってしばらくすると、いかにも名建築な大きな建造物が見えてくる。
そしてその奥に今回の目的地・神奈川県立音楽堂、そのとなりには神奈川県立図書館の旧本館。
① 神奈川県立音楽堂 外観
見学会でいただいたパンフレットによれば、紅葉ヶ丘には5館の公共文化施設があり、このうち神奈川県立図書館(前川國男館)、神奈川県立音楽堂、神奈川青少年センターの3館が日本の戦後モダニズム建築を代表する建築家・前川國男の設計で、今回見学する神奈川県立音楽堂は1954年に図書館と一体の建築として開館した日本初の本格的音楽ホール。ホールの壁面はすべて木で作られており、開館当時『東洋一の響き』と絶賛され、現在も“木のホール”の愛称で親しまれているとのこと。
② 神奈川県立音楽堂 ホール 壁も「なみなみ天井」もすべて木でできている。
受付をすませてホールに入ると森山開次が神奈川県立音楽堂内でダンスをする映像が流れている。ホールも見たい、映像も見たいでキョロキョロしていてしっかり見られず。
そうこうしているうちに開始時間となり、見学者は何班かにわかれて見学開始。
③ 普段は入れないバルコニーから見た神奈川県立図書館。左手に見えるのが神奈川青少年センター。
④ 図書館、音楽堂の外観のホローブリック。日差しをやわらげる効果があるそう。建築中の映像に職人さんがブロックをひとつずつ積んでいく様子があった。全部手で積んだのかと思うと気が遠くなる。
⑤ 舞台から客席をのぞむ。残響時間は1.4秒(空席時)とのことで見学者みんなでかわるがわる手を叩いて残響をあじわう。
⑥ TICAさんと。背格好と髪型のせいか、親よりもおばふたり(Caccoさん、TICAさん)と似ているといわれる笑
⑦ 大きな窓が開放的なホワイエ。音楽堂の裏手は掃部山公園の緑。
⑧ ホワイエの天井は「ガタガタ天井」。工費の節約のためホールの段差がそのまま露出しているのだそう。
⑨ 床はテラゾー仕上げ。白い部分が枠となり、そこにモルタルに御影石を混ぜたものを流しこんでいる。これも当然すべて手作業。2階へのぼる階段は手すりの曲線がうつくしい。階段の最下段は床に自然とつながるような台形になっている。
⑩ 音楽堂と図書館とつなぐ部分はかつてレストランがあったそう。
⑪ 音楽堂と図書館の裏手には庭。前川國男は「なにもないスペースがある」ことを大切にしていたんだとか。
建物見学ののち、ホールに戻って建築中の記録映像を見る。足場は竹、手押し車で材料を運び、コンクリを打つ。ブロックにモルタルを塗り付けひとつずつ積んでいく。
いま見た建物が人の手によってできていく様子に驚く。映像を見ながら東京タワーの建設中の様子を思い出したけど、東京タワーの竣工は1958年なので、時代的にはほぼ同じ。 東京タワーといえば戦後復興のシンボルだけど、それより4年も前、戦後10年も経たずに音楽堂を作るというのはすごいことだなと。
神奈川県立音楽堂は当時の県知事内山岩太郎が終戦直後、人々が活力を養う場として音楽をたのしむ場が必要だとして、当時建設が計画されていた図書館に併設するかたちで建築を進めたのだそう。
見学会はこのあと、神奈川県立図書館旧本館の記録映像を見てお開きとなりました。
旧本館は現在休館中。改修工事ののちに前川國男館としてオープン予定とのことです。
神奈川県立図書館 前川國男館(旧本館)建築動画【ショート版】 - YouTube
こちらでショート版が見られます。
この記録映像の音楽がすこぶるよくて、これが木のホールの威力か!(それとも単にスピーカーがいいのか?)とかいろいろ思い、気持ちが盛り上がっているうちに今度は音楽を聴きにいこうと思っています。
次回は横浜市の救急救命講座を受講の予定です。