私は墓を見つけた 夢枕 獏
夕暮れ、とある岡の上で私は墓を見つけた。どういふわけか、自分の名前がほっである。銀のくわでほってみれば、現われたのはまさしく自分の死体であった。
いつだったか、夢でこのやうな情景を見たやうに思ふのだが……。
私は「元気でな」と彼に声をかけると、まだ紅みがさし、不思議と生き生きしたその顔の上に、湿った黒い土をかけてやった。
おまへはこれからずっと、さうやって士を食ふて生きてゆけ。