コンピュートピア ベン・ハンデン

 「うーむ、またへらされている!」
 彼は待ちに待った給料カードを見て、思わずさけんでしまった。いくらぼくの働きが悪いったって、こんな減らすなんて・・・ちっくしょう、コンピューターめ!#゙はそう思いながら、横目でじろっと<労務管理コンピューター>をにらんだ。ラインプリンターが彼にあかんベエ≠しているように紙をはきだしていた。・・・また腹がたった。
 彼はどうしてもコンピューター社会に順応できなかった。子供の頃からそうだった。学校のティーチング・マシンになじめず、成績はいつも悪かった。そんな訳で、どうにか母校をでることが出来ても、彼を雇ってくれる会社はほとんどなく、彼はある三流全社にはいった。それが今つとめている会社・・・である訳がなく、そこをくびとなり、今はある七流会社に入社している。
 彼は上役にどなられて、まだがんがんしている頭をかかえて家路についた。
 ・・・ふん! あのコンピュータバ力め、自分なんかコンピュータの奴隷じゃないか!
 彼はコンピューターに対する憎しみが人間へのそれに変るのを感じた。そう、人間が悪いのだ。すべてを機械にまかせっきりの人間が。
 人々はそれがなければ何も出来やしないのに、彼のように社会に順応出来ない人間を放っておく。そう、コンピューターを全部パアにしてしまえばいいのだ。そうすれば社会はおしまいだ。彼はそんなことを考え始めた。
 しかしコンピューターを狂わせる機械をつくれるくらいなら、彼はとっくにこの社会に順応していただろう。彼は機械によわいばかりか、コンピュークーに関してはほとんど知識がなかった。しかし、憎しみはすべてを可能にするのだ。彼はコンピューターの勉強を猛然とやり始めた。
 彼はついに機械を手にいれた。ある晩、それを実行に移すことにした。街には夜の帳がおりていた。人通りのとだえた街へ、彼は機械をつみこんだクルマで出かけて行った。
 バックミラーにうつる彼の顔はとても楽しそうだった。口からは自然に歌がもれてくるのだった。彼はクルマを自動操縦にきりかえ、窓からアンテナを出した。そしてスィッチを<ON>にいれた。カチャと言う音が、彼にはとてもすばらしく聞えた。
 その時、クルマがコントロールを失しなったように、急にガタガタとゆれだした。彼は背筋がこおりつく思いがした。・・・このクルマがコンピューターを利用したオートパイロットであることを忘れていたのだ。
 あせって手動にきりかえようとしている彼の目に、ビルの壁がいっぱいにうつった。

 周りがパッと明るくなった。しかし彼の頭はもやがかかっているようだった。目の前にある人が立っていた。彼の学校時代の先生・・・彼はすべてを思い出した。
 「どうだい。これが君の未来の姿だよ。コンピューターで、シミュレーションした結果を君の頭の中におくりこんだんだよ」
 「はい、先生。わかりました。ぽく、機械につよかったんだな。もっと勉強します・・・」
 彼は足どり軽く家路についた。今日はプログラミングの勉強をしよう、と思いながら。


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