隔絶された部屋  高橋 恵美子

 部屋がある。窓はない。・・・ある時もある。窓の外は暗闇の底知れぬ深淵の時もあれば、異境の広大な景観を前に降りしきる雨の時もあり、陽光にきらめきながら静止した感のあるおだやかな海岸の時もあれば、又、立ちならぶ異様な高層建築のゆがんだ黒い影の時もある。が、そのほとんどは単なる幻影であり、意味がない。
 部屋には、必ずドアがついている。そのドアが開くのか開かないのか、たいていは、考えてみるだけで出しかけた手を引っ込める。


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