五つの新星 平岩 雅博
彼は自分でもなかなか信じられなかったが、おととい同じ所を写した星野写真には、確かにこの星はない。しかし、今朝早く写した写真のネガには、二日前にはなかった星がルーペを通してはっきりと見ることが出来る。
「まちがいない。新星だ」
彼はさっそくそのフィルムを引伸機にセットして印画紙に焼きつけた。
印画紙をドライヤーでかわかしている間、東京都三鷹市の東京天文台に電話で連絡をとった。その次の日には、東京天文台から新星発見確認の連絡があった。
同一人物が新星を短時日に三つも発見したことに刺激されて、全国のアマ天がおれも新星を発見しようと血まなこになっているころ第四の新星が発見された。
「なんだ!また彼が。君悪い冗談はよしたまえ」
「いえ冗談なんかではありません。本当です。おまけに今度は超新星らしいです」
「有無、それでデータは?」
「今回は彼が直接持参して来てるんです」
新星を発見した少年に会って見ると別にどこと言って変りばえのしない平凡な少年であった。
「まあ写真とネガを見せてもらいましょう」
そう言って初老の天文学者は少年からネガを受け取り、ルーぺで見ると確かに系外星雲の中にひときわ黒いしみがあった。
「確かに超新星の様だが、なかなか良くとれているね、この天体写真は。うまいもんだ。ところで君は、新星には興味あるんだろうね」
「はい、それは勿論。星野写真は小学生のころからやっていたんですが、それはもうただ新星を見つけたいと思う一念で・・・。でも仲々機会にめぐまれませんで。もう今年で六年目になるんですよ・・・新星を見つけようと思うようになって。今年中に見つからなかったらもうやめようと考えていたんですよ」
「ほほう、じゃこれでやめないですんだわけだな」と言いながらほほえましく思って少年天文学者を見つめていた。
「はい。もう毎晩毎晩星空を見つめながら、今晩こそは新星が出現するようにと念じていたもんですよ。不思議なもので、特別強く念した日にかぎって新星を見つけたんですよ」
その時、その天文学者の頭にふと超能力と言う言葉がうかんだが、距離的時間的にもそんなことあるはずないとすぐに考えを打ち消した。
「ぼく、思うんですが、我々の太線が新星になったらおもしろいんじゃないかってね」
それからも、しばらく話し合っていた二人だったが、周囲が異常に暑いのに気がついたが、その時はすでに遅かった。